長袖を嫌がる子どもの心理と対応|敏感な子でも快適に過ごす方法
公認心理師*やまおさん
2025/10/26
はじめに

学校や園では、寒くても薄着のまま過ごす子どもを見かけることがあります。
私自身も子どもの頃や親になった今でも、そんな子を目にすることがあります。
「寒くないの?」と思うこともありますが、子ども本人にとっては理由がある場合が多いのです。
今回は、寒さを我慢して半袖を選ぶ子どもの心理や背景、そして保護者や周囲の大人ができるサポートについて、心理士の視点から解説します。
なぜ寒くても長袖を着ないのか

感覚が敏感な子どもたち
寒さよりも「肌に触れる感覚」が優先される子どもがいます。
こうした子どもは発達障害の診断を受けている場合や、グレーゾーンと呼ばれる特性を持っていることもあります。
肌に触れるものが多いと不快に感じるため、寒くても半袖を選ぶことがあります。
寒さよりも肌触りが優先される
肌触りに敏感な子どもにとって、長袖は不快感の原因になります。
中には裸に近い状態が快適だと感じる子もいますが、社会的に許容される範囲で半袖や半ズボンを選んでいることも少なくありません。
生地やサイズを工夫することで着やすくなる

素材によっては着れる場合もある
長袖を嫌がる子でも、生地によっては着られることがあります。
例えばフリース素材は柔らかく肌触りが良いため、急に着用できるようになる子もいます。
見た目が同じ素材でも、メーカーや生地の厚みで着心地が変わる場合があるので、いくつか試す価値があります。
オーバーサイズで密着を避ける
肌に密着する服が苦手な子には、少し大きめのサイズを着せることで快適に感じることがあります。
密着せず、肌に触れる面積が少ない服なら我慢できる場合もあるため、サイズ感の調整も重要です。
感覚の敏感さは成長とともに変化する

年齢や成長によって変わる感覚
肌の感覚は成長とともに変化します。
敏感さが強まることもあれば、徐々に落ち着くこともあります。
そのため、毎年少しずつ長袖を試すなど、無理のない範囲で挑戦してみることが大切です。
少しずつ試してみることが大切
子どもが嫌がらなければ、少しずつ素材や着方を変えて、長袖に慣れる経験を積ませるのもおすすめです。
寒くないわけではないという理解が必要

肌に触れる感覚が優先されている
半袖で過ごす子どもは寒さを感じていないわけではありません。
ただ、寒さよりも「肌に触れる不快感」を避けたい気持ちが優先されています。
そのため、ストーブやこたつなどで暖を取りながら過ごしていることが多いです。
寒さ対策は別の方法で補助する
長袖を無理に着せるのではなく、ストーブやひざ掛けなどで寒さを補助すると、子どもも安心して過ごせます。
注目を集めるために半袖を着る場合もある

注目行動としての半袖
肌触覚に問題がない場合でも、真冬に半袖でいることで周囲から注目を集めたい子どももいます。
「寒くない?」など声をかけてもらえることが目的です。
褒め方や関わり方で代替の注目を与える
注目行動が理由の場合、半袖であること以外で褒める体験を増やすことが有効です。
長袖を着たら褒めるなど、他の形で注目される経験を積ませると、無理なく行動を変えることができます。
まとめ|周囲の理解と環境整備が大切

寒くても長袖を着ない子どもには、肌触覚の敏感さや発達の特性、周囲の注目を集めたい気持ちなど、さまざまな理由があります。
こうした子どもに対しては、無理に長袖を着せるのではなく、まずは「なぜ長袖が嫌なのか」を理解することが大切です。
素材やサイズを工夫したり、ストーブやひざ掛けで寒さを補ったりすることで、子ども自身が快適に過ごせる環境を整えることができます。
また、半袖で過ごすことで注目を集めようとする場合には、長袖を着たときに褒めたり、注目してもらえる機会を他の形で作ったりすることも有効です。
からかいや馬鹿にすることは避け、子どもが安心して自分らしく過ごせる環境を周囲が支えてあげることが、何よりも大切です。
寒さや感覚過敏、注目行動などの背景を理解しながら、子ども一人ひとりに合った対応を工夫することで、長袖・半袖に関わらず、安心して学校生活や日常を過ごせるようになります。

公認心理師*やまおさん
経歴:臨床心理士、公認心理師
児童福祉の分野で心理士をしています(20年以上)。発達障害児への心理教育や、虐待被害を受けた児童への心理ケア等を担当しています。




