【心理士直伝】親が出来る自傷への対応策はある?相談先は?‐後編‐

公認心理師*やまおさん

2025/03/28

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【心理士直伝】親が出来る自傷への対応策はある?相談先は?‐前編‐

前編は自傷が起こる原因についてお話ししました。後編は対応策や相談先をお話させていただきます。

自傷行為、親はどうすべき?

安全の確保

何よりお子さんがけがをしないように安全を確保することです。自傷行為をするお子さんの中には、痛みを感じない程度の力加減ができるお子さんもいますが、けがをするほどの力で自傷するお子さんもいます。
例えば、もし壁に頭を打ち付けるようなことがある時はクッションを挟む、その場から離す、といった対策を取りましょう。

状況の記録をとる

自傷行為の起こる状況、(例えば外出先、○○の後、時間帯)や、時間帯、自傷行為の長さ、収まり方、もしくは起こりにくい状況など、メモを取っておくと、対応策を考えるために役立ちます。

起こりにくい環境を作る

記録をもとに、自傷行為が起こりにくい環境を整えていきます。
例えば
・予定の変更に起こることが多い→スケジュールを徹底する。変更はなるべくギリギリに伝える.。
・外出先で起こることが多い→連れて行くことを避ける、安心グッズを持っていく。
・空腹の時間帯が多い→食事の時間を早める、間食で調節する
・視覚的な情報があると起こりにくい→絵や文字で示す
というように、お子さんに合わせた環境調整を行います。

別の感覚刺激を教える

落ち着いている時に、自傷行為の代わりになる感覚を試してみましょう。強めの力を入れてマッサージをしたり、手首にゴムを通しはじいたり、といったことが、自傷行為の代替行動になることがあります。

伝えるという方法を教える

自分の思っていることや感じていることを、自傷行為ではない方法で伝えられるように、生活の中で意識して教えるようにしていきます。
まずはお子さんの気持ちをラベリングします。不快な感情を示したとき「痛いね」「嫌だったね」「怒ってるのね」といった気持ちを教えるようにします。表情カードを使うと分かりやすいかもしれません。
またことばで伝えるのが難しいようなら、カードを提示させる方法もあります。もちろんうれしい、楽しい、喜んでいるといった気持ちの表現も教えてあげてくださいね

ストレスや不安の軽減

お子さんが好きなもの、好きなこと、落ち着ける場所がないか、考えてみましょう。落ち着く場所に連れて行く、安心グッズを渡す、といったサポートをし、自傷行為が収められたことをほめるようにします。
感覚過敏は大人になるにつれて和らいでいき、コミュニケーションスキルも徐々に身についていきますが、ストレスや不安は多かれ少なかれ生涯にわたって感じるものです。
深呼吸をする、音楽を聴く、絵を描く、運動する、アニメを観る、といったストレスマネジメントの手段が複数あるとよいですね。好きなこと、安心できるものを増やし、少しずつ自分で対処が取れるようにしていきます。

どこに相談すればいい?

お子さんの自傷行為が心配な場合は、医療や療育の専門家の助けを借りることも検討しましょう。
身体的な不快感があるようなら、治療の必要な疾患がないかどうか、医療的なアプローチが必要になります。 コミュニケーションスキルや、気持ちのコントロール力をつけるためには、療育が役に立ちます。 保健センターでも気軽に子育てや発達の相談ができます。お子さんへのことばかけや遊び方の工夫、療育の利用についても相談できます。
また同じような経験をされた先輩ママ・パパに話すことにより、状況を客観的に整理できると、対応が楽になることもあります。

まとめ

自傷行為の理由は一つではなく、複数の要因が絡み合うことが多いと思われます。お子さんの安全を守りながら、行動の背景を客観的に考えることが大切です。
特に発達障害のお子さんの感覚過敏や、自傷行為を通じて不快感を緩和することがある、ということは、一般的な感覚では想像がつきにくく、理解しにくいと思います。
専門家や身近な周囲の人たちサポートを得ながら、お子さんの自傷行為を減らしていきましょう。そのようなかかわりが、お子さんの発達全般を支えることになります。

公認心理師*やまおさん

経歴:臨床心理士、公認心理師

児童福祉の分野で心理士をしています(20年以上)。発達障害児への心理教育や、虐待被害を受けた児童への心理ケア等を担当しています。

せのびーる

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