【保育士が解説】発達っ子がぐんと育つ!生活と人との関わり②
保育士*まっつん先生
2025/09/08
はじめに

前回は、生活スキルについてお話ししました!
前回のコラムはこちら!
「できる・できない」の視点で考えたときに、社会的には異質な場合があることを、ご理解いただけたと思います。
今回は生活スキルの獲得の視点とソーシャルスキルの関連についてお話ししようと思います!
生活スキルの評価

前回お話しした「足首までズボンや下着を下げて排尿する人」は、「お尻を出さずにする」形に修正するより、「トイレでは必ず個室に入ってする」形に修正しました。
これは生活スキルとしての視点というより、ソーシャルスキルとしての評価です。
「立っておしっこができる」という生活スキルの獲得を目指す場合、ある程度の年齢になると周りの大人は立ち入ることが難しくなりますよね。
入浴の際に「清潔」を意識しての洗体・洗髪ではなく、形式的な「入浴」になってしまうのも同様です…
「清潔」や「羞恥」の感覚・感情は障害の程度によっては達していないことも十分にあり得るのです。
「恥ずかしいこと」「周りが不快に感じること」ということを自分で意識することは難しい場合があるのです。
そのため、生活スキルの獲得ばかりに目を向けず、ソーシャル(社会)スキルの視点を併せ持って考えていくことが必要です!
食事や着脱などの生活スキルに関しても、「できる・できない」の評価だけではなく「周りから見たときにどのように思われるか」の視点も併せ持つことで「できないけど、こうすれば社会的には問題ないだろう」という視点が持てるようになりますよ!
ソーシャルスキルとは

ご存じのように生活スキルとは別に「ソーシャルスキル」というものがあります。
乳幼児は生活スキルの獲得に目が向きがちですが、後々社会に出ることを考えると、ソーシャルスキルの視点はより一層大切だといえるでしょう。
ソーシャルスキルを分かりやすく
「他者との関係性の理解」「他者を意識した立ち振る舞い」と理解していただいて構いません。
しかし!
前に述べたように「羞恥」などの感情は最終段階であり、場合によっては獲得自体が難しいとも言えます…
「羞恥」と近い「誇り」「見栄」など、他者を意識した感情の獲得がソーシャルスキルには必要ですが、その獲得が難しい場合、どうすればよいのでしょう??
それは前述したトイレの例のように、代替方法を身に着けることで解決に向かいますよ!
本来は「社会(ソーシャル)」を理解し「他者がどのように感じるのか」を考え行動すること(スキル)が「ソーシャルスキル」と言えます。しかし!
発達っ子には難しいことです。
実際にそれに類するトラブルも多く聞かれます…
そこで、生活スキルの獲得と並行して、表面的ではありますが、
前述のトイレの例のように「〇〇の時は△△する」といった形でソーシャルスキルの獲得を見据えていくことが必要だといえるでしょう。
ソーシャルスキルを身に着ける

今、私は企業の障害者雇用アドバイザーもしており、企業から様々な相談があります。
その中に....
「挨拶することの大切さをどう伝えたらよいか」
「マナーを守って食事をすることの大切さをわかってほしい」
など、いわゆるソーシャルスキルに分類されるものが多くあります。
「人とすれ違うだけでも会釈すると、相手はうれしいと感じる」
「挨拶しないと『怒ってるのかな』『自分のことを嫌いなのかな』とか、自分が思ってもいないことを考えられてしまう」
と、伝えてみては?と提案しましたが
「全く理解できないみたいです」との返事をいただくことも多くあります。
ソーシャルスキルの理解は、それだけ難しいといえるのでしょう。
これらのことからもわかるように、「ソーシャルスキルを身に着ける」ことができる場合と、難しい場合があることを考えると、「〇〇の時は△△する」といった表面的で形式的なものでも「ソーシャルスキル」といえるのかもしれません。
まとめ

障がい児保育においては
「〇〇ちゃん、今日お休み?どうしたの?」
「なんか△△くん来ないと寂しいね」
と、言われるようなクラスメイトとしての存在になることを目指します。
「できる・できない」ではなく
「大切な友だち」としての存在となるよう、生活スキルの獲得ばかりに目を向けすぎず、表面的であってもソーシャルスキルを身に着けていくよう考えていくことが大切だと思うのです。
このような視点で、お子さんのことをより長期的な視点で考えてみてみましょうね。

保育士*まっつん先生
経歴:保育士25年(保育所、児童発達支援、就労継続支援など)。現在は大学教員です。