【保育士が解説】発達っ子がぐんと育つ!生活と人との関わり①
保育士*まっつん先生
2025/09/01
はじめに

保育所や幼稚園の先生からの相談に
「お母さんは、『家では出来るんです』というんですが、園では全くできないんです。本当にそうなのかもしれないんですが、全然できないのに無理にさせることもできなくて…」というものがあります。
例えば...
着替え(ボタンやファスナー)、スプーンや箸を使っての食事、座って待つことなど所謂生活全般の身辺自立(生活スキル)が「家ではできている」という保護者と、園では自分で着替えることもなく、自食しない、または偏食が激しく給食にいっさい手を付けない、座って待っていられないなど、真逆の姿しか見られない園とでお互いに理解しあえていない状況になることがあるのです。
今回は、このような「家」と「園」での姿の違いについて、2回にわたってお話していこうと思います。
生活スキルとは

「身辺自立」または「生活スキルの獲得」ということがあります。
大まかにいえば、服の脱ぎ着ができ、食事も座って自分で食べる自食ができ、排せつも自立している状態を言います。特に排泄は自分で尿意や便意を感じ、自分でトイレに行って排せつし始末もできる状態までを自立と言います。
ASDのお子さんは口腔内や皮膚などに過敏(敏感すぎる)と鈍麻(鈍感すぎる)が混在していることがあり、着脱も一苦労なことがありがちです。
素材(肌ざわり)や色などにこだわり、着れる服が限定される状態だったり、指先が不器用なためにボタンやホック、ファスナーを自分でできないこともあります。
食事に関しても同様で、口腔内過敏があると複数の食感が混ざっているものを受け付けないことがあります。
例えば...
チョコレートは好き!アーモンドも好き!
でも、クラッシュアーモンドが入ったチョコレートは食べられない...ということがあるのです。
見た目でも複数のものが混ざっている食べ物、ひじきの煮物や炊き込みご飯、カレーがかかってしまった白ご飯なども食べられないことがあります。
衣服の着脱や食事に関しては身近な人(保護者やきょうだいなど)がモデルとなりますが、排せつはモデル化が進みにくいため、自立が遅れがちです。
排せつに関しては、園でのモデルが効果的な場合が多いため、家庭では自立していないが、園では自立しているということもあります。
このように、生活全般について自分でできる状態を「生活スキルの獲得」「身辺自立」と言います。
保護者と保育者の認識の違い

保護者が「家では出来ます」と言っていても「園では出来ない」ことがあるのは、実際に「できる」といえるレベル認識の違いと、ASD児の特徴の表れであることの2つが考えられます。
実際にASD児は場所によって大きく姿を変えることがあります。
家では自分でなんでもできるが、園では一切何もしないこともあることなのです。そのため、園から「今、自分でスプーンを使って食べることを頑張っています」と言われても、保護者にしてみれば「家では自分で食べているのに」という違いが出てきます。
また、ADHD児は、家では刺激が少ないため多動性があまり高くないことも少なくありませんが、園では身の回りが刺激にあふれているため、他児の動きに刺激されて食事中も立ち歩いたり、途中で食事をやめて遊んでしまうこともあります。
着替えやトイレを面倒に感じてしようとしなかったり、毎回保育者が付きっ切りでさせることになったりということもあります。
このような違いは、時に誤解を生むことがありますので、日常的に園と家庭での姿の情報交換をまめにしておくことが大切です。
「家では出来るのに、先生はちゃんと見ていてくれない」
「周りの子のせいなのに」
と、保護者に思わせてしまうと、訂正はなかなか簡単なことではありません。
普段から園での様子を細かくお話しし、家庭での様子を聞き
「〇〇だから、園ではまだ難しいのかもしれません。おうちでのやり方を参考にしてみますね」
など、「連携の大切さ」を示していくことが必要でしょう。
生活スキルの評価

このように、園と家庭では姿が異なることがあるため、相互理解を進め連携していくことが大切です。
その中で気を付けていきたいのは「できる・できない」の判断に偏らないようにすることです。
私の経験ですが、就労継続支援施設での余暇支援で街中に出かけたとき、ある男性利用者のトイレに付き添うと、その方は足首までズボンや下着を下げ、お尻丸出しで排尿をしていました。
当たり前ですが周りの人は一様に驚き、中には「え!?」と声を上げる人もいました。
この方はおそらく幼少期に獲得したトイレのスタイルを修正する機会がなかったのでしょう。
「立っておしっこができる」ことが目的になったため、それ以上のことにつながらなかったのかもしれません。
でも「立っておしっこが『できる』」ことがそれほど大切でしょうか。
次回は、生活スキルのことからソーシャルスキルについて考えてみたいと思います!
次回もお楽しみに!

保育士*まっつん先生
経歴:保育士25年(保育所、児童発達支援、就労継続支援など)。現在は大学教員です。