【作業療法士】遊具が怖い?極端に怖がってしまう「重力不安」ってなに?
作業療法士*てつ先生
2025/04/25
はじめに

放課後デイサービスに勤務していると、たまに遊具に乗ろうとしますが、極端に遊具を怖がる子供をよく見かけます。
例えば、滑り台から滑れない、ブランコに乗るだけでも怖がってしまう、ジャングルジムに乗ろうとするが、足が地面から離れただけでも怖がってしまうなどの様子が見られることがあります。このような子供は、もしかしたら「重力不安」が関わっているかもしれません。
今回は、この重力不安について解説を行い、遊具を怖がる子供の支援についても伝えていきたいと思います。
重力不安ってなに?

重力不安は、身体の動きに対する反応です。
例えば、立ったままの状態から頭の位置がずれたり、足が地面から離れるだけでも恐怖心を感じてしまいます。
この重力不安が起こる原因は、様々な諸説がありますが、感覚統合による前庭感覚と固有受容感覚の過剰反応やその調整に問題があるとされています。
さらに、身体図式の未発達により、身体の感覚を理解することが曖昧で、力加減を上手にコントロールすることが苦手なため、遊具も思うようにコントロールすることが難しくなります。
重力不安で何が起こるの?
重力不安がある子供は、日常生活においても、身体を動かしたり、運動をする際に重力不安の症状が見られることがあります。
1.小さい動きでも大きい動きと感じてしまう
ブランコや滑り台などのゆったりとした動きでも、重力不安のある子供は大きな動きと感じてしまいます。 もしかしたら、ジェットコースターに乗っているように感じているかもしれません。
2.頭を動かす時や足が地面から離れる時に怖がる
頭が少しでも傾けたり、足を床に着かないブランコなどの遊びを怖がり、その遊具や運動を避ける傾向があります。さらに、そのような症状は日常生活の動きにも当てはまります。
例えば、車の乗り降りを怖がってしまう。縁石から跳び降りる事を極端に怖がる。
など、何気ない日常生活の動きの中でも怖がってしまいます。
身体を曲げる動きが苦手

重力不安をもつ子供は、身体を曲げる動きが苦手なことがあります。 身体を曲げる動きとは、遊具や跳び箱から跳び降りる時は、膝、体幹を曲げて着地します。 この着地した時の姿勢を「身体を曲げる動き」といいます。 この身体を曲げる動きは着地した時に安全な姿勢をとるための姿勢であり、人間の自然な動きでもあります。 車や段差が低くても降りるのに時間がかかってしまう時は、この身体を曲げる動きが苦手なため、安全に地面に着地することが難しくなります。
遊具を怖がる子供の支援や効果的な遊びについて

1.怖がる時は足台を用意してあげる
公園にあるブランコで子供を座らせてしまうと足が地面から離れてしまい、恐怖心を助長させてしまうかもしれません。 そのような場合は、足台をブランコに乗っている子供の足元に置き、地面と足の隙間を極力無くしてあげる配慮を行うことで、いつでも足がつける安心感を与えることができます。 そのような配慮をすることで、子供自身がいつでも遊びを止めることができます。
2.後ろへの配慮について
例えば、ブランコに乗っている時は、後ろを見る事が難しく、後方への動きに対して怖がることもあります。 この後方への恐怖心も重力不安に繋がってしまいます。 後方への恐怖心を軽減させるためには、後ろに段ボールや置物などを置き、後ろに支える物があることで後方への境界を知っておくことで安心感に繋がります。 大人が後ろにいてあげることも効果的です。
3.身体を曲げる動きを身につける
重力不安をもつ子供は、台などから着地する際に身体を曲げて安全な姿勢をとることが苦手です。 跳び降りる恐怖心が強い子供は、最初は低い位置からジャンプをする練習がおすすめです。 マット一枚から始め、徐々にマットの枚数を高くしていき、高いところからでもジャンプができるようになることで、重力不安の恐怖心も軽減できると考えられます。
遊具を怖がる子供の支援や効果的な遊びについて

重力不安は、病気ではなく、身体の動かし方の理解が曖昧なために起こります。 年齢を重ねるごとや段階づけで遊具の練習を行うことで改善されていきます。 遊具を怖がってしまう時は、無理に遊ばずに、少しづつ遊具に慣れていけば大丈夫です。

作業療法士*てつ先生
経歴:作業療法士歴11年
作業療法士として働いています!
感覚統合や運動療法、作業活動などを通して、子供達が楽しく成長出来る事を目指して日々努力しています。