【お友達トラブル】叩く・噛む・モノを投げるなど他害への対応
公認心理師*やまおさん
2024/05/21
保育園や幼稚園や学校などお友達との関わりがある現場で、多い相談の一つで「うちの子はすぐに手を出してしまって」とか「嫌なことがあったら物を投げてしまって」という、いわゆる衝動的な行動があります。今日は、このようなの他害行動へのの対応についてご紹介させていただきます。
①どの行動がダメだったかを伝える。
具体的にどの行動が良くなかったかを説明してあげることが大切です。「具体的に」というところは、子育て全般において、非常に重要なキーワードです。抽象的な表現では理解できる子と、理解がしにくい子がいますので、どの子どもにも伝わりやすい言葉がけとしては、具体的に伝えるということが非常に大切です。
他者を叩いてしまった子を叱る際には、「悪い子だから」ではなく、「お友だちを叩いたことを叱っているんだよ」と説明します。その子の人格を否定しているのではなく、どの行動が良くなくて、その行動を修正しなければいけないということを伝えましょう。こういう時に大人はついつい、あれもこれもと言いがちですが、それでは子どもには分かりにくくなってしまいます。今、ここで起こったことに限定して話をすることが有効です。
②行動をどう修正すれば良いかを伝えて、やってみる
トラブルがあった際に、「ごめんね」「いいよ」で済ませてしまうのは望ましくありません。謝ることは必要ですが、同じぐらいに大切なのが、もしまた同じ状況になったら、どう対応すれば良いかを一緒に考えるということです。「もし、またお友だちがボールを貸してって言ってきたらどうしよっか?」と一緒に考えてあげることで、同じようなトラブルを繰り返すことを予防できます。対応方法を考えて、その場で一緒にやってみる(ロールプレイ)、そして「上手にできたね。次はそれをやってみようね」と評価してあげましょう。
ここでも、具体的に対応方法を考えることが大切です。【お友だちと仲良くする】では、【仲良く】が抽象的な表現となっていて、理解しにくい子どももいます。実際に、自分は仲良くしているつもりなのに、なぜか相手がすぐに怒ると困っている子どももけっこういます。こういう時には具体的に「相手が嫌と言ったら、その行動はやめる」「お友だちの体は触らない」「あっちに行ってと言われたら大人に相談する」などの具体的な対応方法を伝えてあげることが必要です。
③うまくできている行動に注目してあげる
お友だちとうまく遊べている時に「上手に遊んでいるね」と声をかけてあげ、評価してあげることが大切です。大人はどうしてもトラブルに介入することになるので、うまく遊んでいる時はほったらかしで、悪いことをした時にだけ注目されるとなると、悪いことをすれば大人が注目してくれるとなって、大人と子どもの関係性が歪んでいってしまいがちです。そうではなく、大人はあなたの良いところに注目するよというメッセージを伝えていくことが大切です。
④クールダウンについて
自分の感情をコントロールするのが苦手な子は必ずいますので、クールダウンについても触れておきます。感情が高ぶってしまってから「落ち着きなさい」と言われても、受け入れにくいですし、落ち着く方法が分からないからそうなっているわけなので、大切なことは、落ち着いている時や機嫌が良い時に、大人と子どもとでクールダウンの方法を具体的に決めておくことです。
クールダウンの方法は、どこでも、一人で実行できるものが好ましいです。もし学校ならどうするか、家ならどうするか、外出先ならどうするか、を決めておき、感情が高ぶったら実践してみます。うまくいかなければ別の方法を考えれば良いのです。
また、もう一つ大切なことは、大人から見てクールダウンした方が良いと判断した場合には、クールダウンを勧めるということを伝えておくということです。大人から見たらイライラしているように見えたので声をかけたら「イライラしてないもん!」とますますイライラするということは、子育てに携わる人の多くが経験することだと思います。まずは大人の勧めを聞いてみようというところができるようになるだけで、ぐっと落ち着く子がけっこういるのも事実です。
クールダウンに関して言えば、小学校以上の場合、クールダウンと称して授業を抜けたがる子がいるという相談をよく受けます。子どもがクールダウンしたいと申し出た場合に、本当にクールダウンを求めているのか否かは本人でないと分からないので、「本当に?」と問い返すよりも、自分でクールダウンを選べたことを評価してあげましょう。その一方で、クールダウン中の授業に関しては、関連する内容を後から個別で補講をするか、宿題として出すことも決めておきます。そうしておくことで、さぼりたいからという動機のクールダウンを予防することが可能です。
さいごに
子どもの他害行動を見て、良い気持ちになる人はいません。自分の子どもなら、なおさらですので、どうしても、そこに注目してしまいがちです。しかし、24時間ずっと他害行動をしている子どもはいません。上記でも触れましたが、最も大切なことは、他害行動をしていない時に、いかに子どもと接するかということを、あらためてお伝えしたいと思います。その子を「いつも乱暴な子」と見るのか、「ついカッとなることもあるけど、優しいところもある」と見てあげるのか、では子どもが感じるものは大きく変わってきます。大人も子ども安心できる関係性を普段から作って行くことが何よりも大切です。
公認心理師*やまおさん
経歴:臨床心理士、公認心理師
児童福祉の分野で心理士をしています(20年以上)。発達障害児への心理教育や、虐待被害を受けた児童への心理ケア等を担当しています。