行き渋りや不登校が心配~就学準備 今から親が出来るコト~
公認心理師*けい先生
2024/07/05
お子さんの小学校入学は大きなライフイベントです。ママパパはうれしさと同時に不安もよぎることでしょう。「小1プロブレム」ということばもあり、小学校に適応できないことや、行き渋りや不登校といった不適応を起こすことは珍しいことではありません。親としては今から対策ができるなら、出来る限りしておきたいですよね。この記事では、行き渋りや不登校を心配しているママパパが、今からできる就学準備はどんなことがあるのか、公認心理師が解説します
よく聞く 小1プロブレムって?
小学校へ入学したお子さんが、集団行動ができず、学校生活に適応できない状態が数カ月続くことを言います。原因は生活習慣の変化や家庭生活の問題などがありますが、特に大きいのは園の生活と小学校生活のギャップです。遊び中心の生活から、学習中心の生活になるため、その環境の変化に対応できないためであると言われています。
小学校で必要な力 ってどんなもの?
・身辺自立:小学校では、着替え、持ち物の管理、食事、トイレといった身辺自立はできる前提です。園では先生が個別にサポートしてくれても、小学校では自分でしなければならなくなります。
・集団のルールを守る:
時間割通りに行動したり、係の活動があったりと、これまでの園生活とは異なる様々なルールがあります。やりたいことがあっても授業中は座って話を聞く、授業の準備と片付けを自分でする、チャイムが鳴ったら席に着く、といった行動と気持ちの切り替えが大切な力になります。・コミュニケーションの力:
小学校では大抵、1クラスに30人以上の子どもがおり、友達関係まで先生の目は届きにくくなります。友達とトラブルがあったり、困ったことがあったりしたら助けを求める、ということが必要です。・学習の土台になる力:
数概念や、読む力、聞く力、書く力、計算する力、推論して考える力は学習面の土台の力になります。また鉛筆を持って文字を書く、姿勢を保つ、といった身体のコントロールができることも必要です。行き渋りや不登校が心配な子どものタイプ
行き渋りや不登校はどのようなタイプの子どもがなりやすいのでしょうか。 ルールに従いにくい、刺激に反応しやすい、コミュニケーションが苦手、学習の土台になる力が育ちにくい、といった傾向があると、学校生活になじみにくくなります。また、不器用さのある子どもは、身体のバランスが悪く姿勢が保てないことがあり、その結果、書字が苦手になったり、先生から注意されることが多かったりと、学習の意欲が低下してしまうこともあります。これらのタイプの子どもの中には、発達障がいの傾向が見られることがあります。特に、読む、書く、計算する、といった特定のことが極端に苦手だという限局性学習障害(LD)は小学校入学後、初めて発覚することが多くなります。 最も配慮が必要なのは、不安や緊張の高いタイプのお子さんです。様々な環境の変化で気づかない内に不安や緊張が積み重なり、対処しきれないストレスで疲れ切ってしまうことがあります。
今から保護者ができる就学準備
・不安を軽減する
学校公開日や行事等で学校見学をしたり、登下校の道順を歩いたりする機会を何度か作れるとよいでしょう。見たことがあったり、来たことがあったりする場所は、不安や緊張感が随分、解消されるものです。 また入学前に教室に入る機会を作ってもらえれば、席に座ってみる、トイレや下駄箱の場所を確認しておく、といったことができ、入学後の不安の軽減につながります。・自分でできることを増やす
ランドセルにノートや筆箱を出し入れする、持ち物の管理を自分でする、困ったことがあったら「教えてください」と言う、等、お子さんが苦手なことがあれば、やり方をていねいに教えておきましょう。・学習の土台になる力を育てる
ママパパと一緒に楽しくことばのやり取りをする、絵本を読む、しりとりをする、といったことで文字への興味がのびます。「ママにお手紙を書きたい」といったことが書字へのモチベーションになることもあります。数概念を育てるためには、トランプやすごろく等で数に親しんだり、おやつを分ける時に「〇個ずつ分けて」、とお手伝いをお願いしたりしましょう。 文字を書くためには、姿勢を保ち、手の動きがスムーズでなければなりません。体を使って遊ぶことを通して、筋力をつけたいものです。
・入学が楽しみになるように準備を工夫する
ママパパの心配が募ると、「〇〇ができないと小学生になれないよ!」ということばかけが増えるかもしれません。ですがこれでは学校生活が益々、不安になります。「〇〇ができるとカッコいい1年生になれるね」と伝えるようにしましょう。 学校生活がイメーできるような動画や通う予定の学校のホームページを見せ、学校ごっこや給食ごっこなどができると、学校のイメージが持て、親子で楽しく就学の準備ができますおわりに
発達の何らかの特性があると感じている場合、就学は不安になることと思います。心配事を整理し、入学前に学校に伝えに行くことも有効です。自治体が配布している「就学支援シート」があれば利用できるとよいでしょう。就学前の不安な時期は、何より、お子さんが安心してご家庭で過ごせること、楽しいと思えることがたくさんあることが、不安や緊張を和らげる基本となります。心配なことは周りに相談をしながら、お子さんが前向きに就学を迎えられるように工夫していきましょう。
公認心理師*けい先生
経歴:公認心理師 27年目
心理士 27年 発達の偏り、不登校などの子育ての相談業務を担当してきました。2児の母です。