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子どもが人の物を盗ってしまうときの理由と対応法|心理士が教えるサポートのポイント

公認心理師*けい先生

2025/12/13

はじめに

お子さんが、親の財布からお金を取ってしまったり、兄弟や友達の持ち物をこっそり持ち帰ってしまったりすると、保護者としては強いショックを受けるものです。
「叱ったのに、また同じことをしてしまったらどうしよう…」と不安になることもあるかもしれません。

この記事では、子どもが人の物を盗ってしまうときに考えられる理由と、親としてできる適切な対応について解説します。

目次

まずは「なぜ盗んでしまったのか」を考える

子どもが物を盗む理由は、ひとつではありません。
いくつかの要因が複雑に絡み合っていたり、本人も「なぜそうしたのか」が分からないまま行動していることも少なくありません。

周囲の大人が「行動の背景」に目を向けることが、最初の一歩です。

欲しい気持ちを抑えられない

「欲しい」という気持ちが強くなり、衝動的に手が出てしまうことがあります。

頭では「盗ってはいけない」と分かっていても、衝動をコントロールする力がまだ育っていない場合、このような行動につながります。

「悪いこと」としての理解が十分でない

大人にとって「盗むこと」は当然悪いことですが、子どもによってはそれをまだしっかり理解できていないこともあります。
これまでにきちんと教えられる機会がなかったり、「なぜいけないのか」という根拠を理解しきれていなかったりすることがあるのです。

その場合、「欲しい」「試してみたい」といった単純な動機から行動してしまうこともあります。

寂しさや不満が行動に表れている

普段は「手のかからないいい子」と言われる子どもが、あえて欲しくもないものを盗ってしまうことがあります。

これは、「見てほしい」「かまってほしいという気持ちが行動に現れている場合があります。
無意識のうちに、寂しさや不満を表現しているのです。

「悪いこと」として冷静に伝える

「悪いことは悪いとしっかり叱るべき」という意見もありますが、感情的に怒るだけでは子どもに本質が伝わらないことがあります。

「人の物を盗むことは、とても悪いことなんだよ」
「そんなことをしたら、お父さんやお母さんはとても悲しい」

このように、お子さん自身が“どんな影響を与えたのか”を考えられるように伝えることが大切です。
叱るというよりも、冷静に・真剣に向き合う姿勢を見せましょう。

相手への謝罪と責任を教える

盗んだ物は必ず返し、相手に謝る経験をさせましょう。
友達の物を盗った場合は、保護者も一緒に謝罪することが望ましいです。

親が心から謝る姿を見せることで、子どもは「自分の行動がどれほど重大だったのか」を実感します。
この経験が、責任を取ることの大切さを学ぶきっかけになります。

衝動を抑える「自己コントロール力」を育てる

「悪いこと」と分かっていても行動してしまう場合、衝動性が強いタイプのお子さんであることもあります。
このような子どもは、盗み以外にも困りごとを抱えている可能性があります。

たとえば刺激に反応しやすいタイプであれば、

  • 興味を引くものを目につかない場所にしまう
  • 誘惑される状況を減らす

といった環境調整が有効です。

また、必要に応じて発達相談や医療機関への受診を検討することも選択肢のひとつです。
落ち着いて過ごせる時間が増えることで、できることも増え、自信や達成感につながります。

子どもの「寂しさ」に気づく

「しっかりしている子」「手がかからない子」と言われるお子さんほど、親に甘えづらくなっている場合があります。
親子の間に少し距離ができてしまっているかもしれません。

そんな時は、特別なことをしようとしなくても大丈夫です。

  • 一緒に過ごす時間を少し増やす
  • 抱っこやハグなどスキンシップをとる
  • 「大好きだよ」「いつもありがとう」と言葉で伝える

これだけでも、子どもにとっては大きな安心になります。

もし日常的に強く叱ってしまったり、体罰的な対応をしてしまっている場合は、一度立ち止まってみましょう。
叱るよりも、「ここまでできたね」「頑張ってるね」とできたことに目を向けることで、子どもの心は安定していきます。

おわりに:盗みは「SOS」のサインかもしれません

子どもの中には、発達障害の特性によって行動のコントロールが難しいケースもあります。
この場合、叱ってもあまり効果が出にくく、むしろ逆効果になることもあります。

また、情緒面での不安やストレスが原因で「盗む」という行動が出ていることもあります。

心理学者・河合隼雄氏は『子どもと悪』の中で、

(盗むことで)
本当は何がほしかったのでしょうね

と問いかけています。

つまり、子どもの行動の裏には「気づいてほしい」「満たされない何かを埋めたい」という心のメッセージが隠れているのです。

もし対応が難しいと感じたら、ひとりで抱え込まずに医療機関や相談機関に相談してください。
お子さんの背景にある理由を丁寧に探りながら、その子に合ったサポート方法を一緒に見つけていくことが大切です。

公認心理師*けい先生

経歴:公認心理師 27年目

心理士 27年 発達の偏り、不登校などの子育ての相談業務を担当してきました。2児の母です。

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