怒りっぽい子も一人で出来るクールダウン!大切な"事前準備"って?
公認心理師*やまおさん
2024/10/14
はじめに
ついカッとなってしまう子どもたちに落ち着いてもらうためには、その準備段階が非常に大切です。 子どもが怒ってしまってから、どうしようかと考えていては遅いので、事前に大人だけではなく、 本人とも「怒ってしまったらどうしたら良いかな?」と話し合っておくことが必要です。
①怒ってしまわないような配慮
どんな子どもでも、イライラするよりも穏やかに過ごせるに越したことはありません。 そのために、大人が配慮してあげることが必要です。 すぐに怒ってしまう子どもであれば、穏やかに過ごせる時間を増やしていくという観点で関わってあげる必要があります。
例をあげて考えてみる
例をあげて考えてみましょう。給食時間に、カップのプリンが1つ余って、希望者はじゃんけんをして勝った人が食べることになりました。 10人ほどが希望し、じゃんけんをしました。負けても怒らない子は「やっぱり、10人もいたら勝てないよね」と考えていますが、 負けて怒っている子は「なんで、食べられないの?食べたかったのに!ずるい!」と言い、 自分が負けるかもしれないという見通しを持つことができていませんでした。大人からの声のかけ方は?
こういう場合に大人が、「10人もいたら、勝つのは難しいね」「負けたら悔しいけど、怒らないようにしようね」「負けても大丈夫だよと思える子は、じゃんけんをしよう」と伝えておけば、 怒りやすい子も見通しを持って参加し、怒らずに済みやすいです。もちろん多少イライラはしますが、それは自然なことですので、大きく怒らなかったら褒めてあげましょう。
②クールダウンの方法について話し合って決めておく
感情が高ぶってしまってから「落ち着きなさい」と言われても、受け入れにくいですし、 落ち着く方法が分からないからそうなっているわけなので、大切なことは、落ち着いている時や機嫌が良い時に、大人と子どもとでクールダウンの方法を具体的に決めておくことです。
最初に決めること
まず最初に子どもと決めておくべきことは、クールダウンするか否かは、子どもの判断で行っても良いが、 大人から見てクールダウンした方が良いと判断した場合には、クールダウンを勧めるということを伝えておく必要があります。 大人から見たらイライラしているように見えたので声をかけたら「イライラしてないもん!」とますますイライラするということは、 子育てに携わる人の多くが経験することだと思います。
クールダウンの具体的な方法
クールダウンの具体的な方法ですが、大人が常にずっと寄り添ってあげることができない場合もあります。
そのため、一人でクールダウンできる方法について考えておくことをお勧めします。
どこでも、一人で実行できるものが好ましいです。家にいる時、学校にいる時、外出先、それぞれでどうするかを決めておきましょう。
家や学校であれば、一人になることができる場所はどこかを、大人と子どもとで事前に考えておきましょう。
そして、その場で一人で何ができるかを考えましょう。布団に入って寝る、紙に鉛筆で落書きをする、部屋の隅でマンガを読む、目を瞑って数字を数える、等色々とありますが、
他の人に迷惑をかけないということや、物を壊さないということは条件に入れておきましょう。
たとえば、物に当たってしまう子がいますが、物に当たって大きな音を出すと周囲が不快に思ってしまうことや、
物が壊れてしまうと取り返しがつかないこと等は、子どもに伝えておく必要があります。
決めていても、うまくいかないこともあります。しかし、クールダウンしようとしたことは評価してあげましょう。
その上で、また別の方法を考えれば良いのです。
③振り返りをする
クールダウン後には、よくクールダウンができたことを評価してあげましょう。
もし、クールダウンができずに怒ってしまったりした場合には、落ち着いた段階で振り返りをする必要があります。
クールダウンができなかったことを叱るのではなく、クールダウンできずに怒ってしまったことで、自分がどんな損をしたかを考えてもらいます。
たとえば、すぐに落ち着くことができたら、他の子と一緒に遊ぶことができずに、ずっと怒っていたので遊べなかったのが残念だったということです。
ここでは、怒り続けるよりも、クールダウンした方が得をするこということを知ってもらうことが大切です。
④怒っていない時の関わりが大切
例えすぐに怒ってしまう子どもでも、ずっと怒っているわけではありません。
楽しく遊ぶことができている時間もあるし、嫌なことがあっても怒らずに対応できることだってあるかもしれません。
そういう時間を「当たり前」として流すのではなく、「上手に遊ぶことができているね」とか「今、怒らずにできてすごいね」と
評価してあげることが何よりも大切です。
そうすることで大人との関係性を確立しておけば、クールダウンの促しの言葉も入りやすくなります。
自分のことを叱ってばかりいる人の言葉を聞こうとは誰も思わないでしょう。
⑤おわりに
すぐに怒ってしまう子どもに対しては、大人もついつい「すぐに怒ってしまう」部分に焦点を当てがちです。
そうなってしまうと、子どもは自尊心が低下したり、大人に対して反抗的な態度を取ったりして、ますます怒りやすくなるという悪循環に陥りがちです。
そうならないためにも、怒っていない時の関わりを意識的に増やしたり、怒ってしまったとしても自分でクールダウンできたことを褒めるなど、
子どもを意図的に褒める関わりが必要であることを意識してもらえたらと思います。
公認心理師*やまおさん
経歴:臨床心理士、公認心理師
児童福祉の分野で心理士をしています(20年以上)。発達障害児への心理教育や、虐待被害を受けた児童への心理ケア等を担当しています。