癇癪で服を脱ぐ子どもへの対応|心理士が教える3つの理由とサポート法 コラム詳細|ふぉぴす

癇癪で服を脱ぐ子どもへの対応|心理士が教える3つの理由とサポート法

公認心理師*やまおさん

2025/12/06

はじめに

 嫌なことがあると、いわゆる「癇癪(かんしゃく)」を起こしてしまうことは、多くの子どもに見られる自然な反応です。
しかし、癇癪の中には、大人がすぐに対応しなければならないケースもあります。その一つが「服を脱ぐ」という行為です。

家の中ならまだしも、外出先や園・学校などで服を脱ぎ始めてしまうと、大人としても慌ててしまいますよね。
この記事では、癇癪で服を脱いでしまう子どもの心理的背景と、家庭や園でできるサポート方法について、心理士の視点から解説していきます。

目次

なぜ癇癪で服を脱いでしまうの?

子どもが癇癪を起こしたときに服を脱いでしまうのには、いくつかの理由があります。

癇癪は「自分の気持ちを伝えたい」「注目してほしい」「嫌な感覚から逃れたい」など、子どもなりのメッセージが込められた行動でもあります。

① 大人の注目を集めたいという思いから

「もっと構ってほしい」「自分の話を聞いてほしい」「自分の要求を通したい」といった気持ちが背景にある場合があります。

普通に泣いても大人にスルーされていたのに、服を脱いだら大人が慌てて駆け寄ってきた——。
そんな体験を重ねることで、「服を脱げば注目される」という学習が起こり、行動が強化されてしまうことがあります。

② 叱られる状況を回避するための行動

自分が悪いことをして叱られたとき、癇癪を起こして服を脱ぐことで、大人の関心が「叱る」から「服を着せる」にすり替わることがあります。

結果として「叱られずに済んだ」という成功体験になり、服を脱ぐ行為が問題回避の手段として定着してしまうケースもあります。

③ 服を脱ぐことで感じる「快」や安心感

肌の感覚が敏感(感覚過敏)な子どもは、服を着ているだけで強い不快感を感じることがあります。

普段は我慢していても、癇癪で心の負荷が高まると、「もう耐えられない!」という状態になり、服を脱ぐことで不快感から解放されようとするのです。
このような場合、行動の裏には「感覚的な苦痛」も関係していることを理解する必要があります。

癇癪が起きていない時にできるサポート

癇癪が起こっていない「落ち着いている時」にこそ、子どもと話をすることが大切です。
感情が高ぶっている時に注意しても、なかなか言葉は届きません。

落ち着いているタイミングで理由を話す

なぜ服を脱ぐことがよくないのか、子どもが理解できる言葉で伝えましょう。

「脱ぐと風邪をひいてお薬を飲まなきゃいけなくなるよ」など、その子自身にどんなデメリットがあるかを中心に伝えることがポイントです。

気持ちを落ち着かせる代替方法を一緒に考える

イライラした時や気持ちが爆発しそうになった時に、「どうしたら落ち着けるか」「何をすれば安心できるか」を一緒に決めておきましょう。

たとえば、「深呼吸をする」「お気に入りのぬいぐるみを持つ」「静かな場所に行く」など。
視覚的にわかるようにイラストやリストを掲示しておくのも効果的です。

服を脱いだ時の対応方針を事前に伝える

「もし服を脱いじゃった時は、ママ(先生)はどう対応するか」を事前に話しておきましょう。

「大人は慌てないで静かに“服を着ようね”って言うよ」と伝えておくと、子どもが予測できる安心感を持てるようになります。

癇癪で服を脱いでしまった時の対応法

実際に癇癪が起きてしまった時には、冷静で一貫した対応が何より大切です。

淡々と「服を着よう」と伝える

大人が焦ったり驚いたりすると、「注目を集めることができた」という体験が強化されてしまいます。

心の中では焦っていても、表情は落ち着いて、「服を着ようね」だけを淡々と伝えましょう
大人が動じない姿を見せることで、「脱いでも注目されない」という学習が進みます。

落ち着いた後に気持ちを振り返る

服を着られた後に、穏やかに「どうして脱ぎたくなったの?」と聞いてみましょう。

叱責するのではなく、気持ちを言語化する手伝いをすることで、次の癇癪の軽減につながります。

叱らずに「服を着られたこと」を肯定する

子どもは「服を着たら怒られた」という体験をすると、次の行動がさらに複雑になります。

服を着られた時には「落ち着けたね」「自分でできたね」と、行動の回復をほめる形で関わることがポイントです。

癇癪を減らすための環境づくり

癇癪で服を脱いでしまう行動への対応も大切ですが、そもそも「癇癪が起きにくい環境」を整えることが根本的なサポートになります。

ストレス要因を見つけて取り除く

どんな時に癇癪が起きやすいのか、日常の様子を観察してみましょう。

音や服の素材、スケジュールの変化など、子どもがストレスを感じる要因を探して、少しずつ軽減していくことが大切です。

「癇癪を起こさない時間」を増やす工夫

「叱られない」「安心して過ごせる時間」を増やすことが、長い目で見て行動の改善につながります。

小さな成功体験を積み重ねることで、癇癪そのものの頻度も減っていきます。

必要に応じて専門家へ相談する

行動が頻繁に起きたり、家庭だけで対応が難しい場合は、発達支援センターや心理士などの専門家へ相談することも検討してみましょう。

客観的な視点からサポート方法を一緒に考えてくれます。

まとめ

癇癪で服を脱いでしまう行動の背景には、「注目を集めたい」「叱られることを避けたい」「服を脱ぐことで安心したい」といった子どもなりの理由が隠れています。
そのため、行動そのものを叱るのではなく、なぜそうしたのかという気持ちの部分に目を向けることが大切です。

大人が冷静に対応し、服を着られたことを肯定的に伝えることで、子どもは「落ち着けた」という成功体験を積み重ねることができます。
また、日常の中でストレス要因を減らし、癇癪を起こさない時間を少しずつ増やしていくことが、長い目で見たサポートにつながります。

「叱る」よりも「理解し寄り添う」姿勢が、子どもの安心感を育み、服を脱ぐなどの困った行動を減らしていく第一歩になるでしょう。

公認心理師*やまおさん

経歴:臨床心理士、公認心理師

児童福祉の分野で心理士をしています(20年以上)。発達障害児への心理教育や、虐待被害を受けた児童への心理ケア等を担当しています。

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