壁や家具によくぶつかる子ども|視力は正常なのになぜ?原因と家庭でできる改善法
作業療法士*てつ先生
2025/12/27
はじめに

最近、「視力は正常なのに、よく壁や家具にぶつかる」「学校から帰ると腕や足にあざがある」というお子さんが増えているように感じます。
一見すると視力の問題のように思えますが、実はそうではないケースも多いのです。
このような場合、原因として考えられるのが「眼球運動と身体運動のコンビネーション(連携)がうまくいっていないこと」。
そして、その根底にあるのが「身体の識別力(ボディイメージ)」の弱さです。
身体の識別力とは、目を閉じていても「自分の手や足がどのように動いているか」を感じ取れる力のこと。
この力が未発達だと、目で見ている情報と体の動きがちぐはぐになり、結果として物や人にぶつかりやすくなってしまいます。
目次
- なぜ壁や家具によくぶつかるの?原因は「眼球運動と身体運動の連携不足」
- 発達特性がある子に見られる「予測の苦手さ」
- 家庭でできる!身体感覚を育てるアプローチ方法
- まとめ|身体感覚を育てることが「ぶつかり」改善への第一歩
なぜ壁や家具によくぶつかるの?原因は「眼球運動と身体運動の連携不足」

目で見て身体を動かす“コンビネーション”とは
たとえば「目で見て手を伸ばす」「ボールを見てキャッチする」など、
私たちの多くの動作は “目で見て体を動かす”連携(視覚‐運動協応) によって成り立っています。
しかしこの連携がうまく働かないと、距離感や奥行きの認識がずれてしまい、壁や家具にぶつかりやすくなることがあります。
目は見えていても、体の動きが情報に追いつかない状態です。
「身体識別力」が弱いとどうなる?
「身体識別力」とは、自分の体の位置や動きを頭の中で正確にイメージできる力のこと。
目を閉じた状態で「今、右手はどこにある?」と感じる力ともいえます。
この力が弱いと、
- 手足の位置をつかみにくい
- 物や人との距離を正しく予測できない
といったことが起こり、結果としてよくぶつかる・転ぶ・あざができやすいなどの行動につながります。
発達特性がある子に見られる「予測の苦手さ」

目で見た情報を予測・判断する力が育ちにくい?
発達特性のある子どもに多く見られるのが、「予測」や「判断」が苦手という特性です。
たとえば狭い隙間を通るときに、
「この幅なら通れる」「これはぶつかるかも」といった判断を瞬時に行うことが難しいことがあります。
また、自分の体の大きさを感覚的に把握しづらい場合もあり、結果として距離感をつかみにくいのです。
身体感覚の未発達が「距離感のつかみにくさ」につながる
空間認知力(自分と物・人との位置関係を理解する力)は、日々の身体感覚の積み重ねで育ちます。しかし、身体感覚の発達がゆっくりな場合、
壁・家具・人との距離を適切に判断する力が育ちにくいことがあります。
その結果、
- よく転ぶ
- よくぶつかる
- あざができやすい
といった行動が見られるのです。
家庭でできる!身体感覚を育てるアプローチ方法

視覚や身体の感覚を育てる遊びは、家庭でも無理なく取り入れられます。 遊びながら少しずつ「距離感」や「身体識別力」を高めていきましょう。
① 目隠しゲームで「手の感覚」を育てる
おすすめなのが、目隠しをしてブロックや積み木の形を当てる遊びです。
見えない状態で手の動きを意識することで、
- 手の感覚を集中して使う
- 自分の体の動きを頭の中でイメージする
といった力が育ち、身体識別力の向上につながります。
② トランポリンやバランスボールで「全身の感覚」を刺激
トランポリンで跳ねたり、バランスボールに座って姿勢を保ったりする遊びは、 体の中心(体幹)や関節・筋肉の感覚をバランスよく刺激します。
これにより、
- 体の位置を感じ取る力(固有感覚)
- 姿勢を保つ力(平衡感覚)
が育ち、自然と空間把握力や距離感の理解にもつながっていきます。
まとめ|身体感覚を育てることが「ぶつかり」改善への第一歩

壁や家具によくぶつかる子どもは、視力の問題ではなく、 身体感覚や空間認知力の未発達が関係しているケースが多く見られます。
「身体識別力」や「空間把握力」を遊びを通して少しずつ育てていくことで、
目と身体の連携(視覚‐運動協応)がスムーズになり、ぶつかりや転びの改善につながります。
家庭でもできる感覚あそびを取り入れながら、
お子さんが“自分の体を思いどおりに動かせる感覚”を楽しく育てていきましょう。

作業療法士*てつ先生
経歴:作業療法士歴11年
作業療法士として働いています!
感覚統合や運動療法、作業活動などを通して、子供達が楽しく成長出来る事を目指して日々努力しています。






