落ち着きがない子どもへの家庭サポート|おうちでできる多動対策&遊びアイデア コラム詳細|ふぉぴす

落ち着きがない子どもへの家庭サポート|おうちでできる多動対策&遊びアイデア

作業療法士*てつ先生

2025/12/31

多動で落ち着きがないお子さんに悩む保護者の方は多いのではないでしょうか。
私の経験では、常に体を動かしてしまうお子さんの中には、身体の感覚が曖昧で、力の入れ方がわからないケースが多く見られます。そのため、授業中でも身体を揺らすことで安心したり、関節を動かす刺激を楽しんだりすることがあります。

実は、こうした「落ち着きがない」行動の背景には、身体を安定させる力が弱いことや、脳の活動を安定させるために動いていることなどが関係しています。

この記事では、そんな落ち着きがない・多動なお子さんに家庭でできるサポートや療育の工夫について、わかりやすく紹介していきます。

目次

落ち着きがない子どもが動き続ける理由とは

「じっとしていられない」「いつも動き回っている」——そんなお子さんの様子を見て、「どうしてうちの子は落ち着きがないのだろう」と感じる保護者の方も多いでしょう。
実は、落ち着きがない行動には、単なる性格やしつけの問題ではなく、身体や脳の発達に関係する理由が隠れていることがあります。ここでは、多動に見える行動の背景を2つの観点から紹介します。

身体の感覚がうまく感じ取れないことが関係している

落ち着きがない子どもの中には、身体の位置や動きを感じ取る「感覚(固有感覚)」が未発達なケースがあります。 この感覚がうまく働かないと、体に力を入れるタイミングや姿勢のバランスを取りづらくなり、じっとしていることが難しくなります。

そのため、授業中や食事中など本来は静かに過ごす場面でも、身体を揺らしたり、足を動かしたりすることで安定感を保とうとすることがあります。
これは本人にとっては自然な行動であり、「動くことで安心している」状態ともいえます。

つまり、動き回っているように見える行動も、身体の感覚を整えるための自己調整行動である場合があるのです。

脳を安定させるために「動いている」こともある

もう一つの理由として、脳の働きを安定させるために身体を動かしているケースもあります。
子どもによっては、集中したり落ち着いたりするために、自然と身体を動かすことで脳のバランスをとろうとするのです。

例えば、手足をバタバタさせたり、机をトントン叩いたり、体を揺らしたりするのは、脳を覚醒させたりリラックスさせたりするための無意識な動きです。
こうした行動は決して「悪いこと」ではなく、お子さんなりの安定を保つための方法と考えられます。

そのため、家庭では「動かないようにしなさい」と無理に止めるのではなく、動いて安心できる時間や環境をつくってあげることが大切です。
動きたいという欲求を理解し、家庭の中で「動いてもいい時間」「静かに過ごす時間」をうまく切り替える練習ができると、徐々に落ち着きが育っていきます。

おうちでできる!落ち着きがない子へのサポート遊び

「だるまさんがころんだ」で“止まる力”を育てる

身体が安定していないお子さんは、自然と身体をゆらゆらさせて動いてしまいます。しかし、それはお子さんにとって動くことがあたり前と感じてしまい、身体を止めることに対して自分で気付きにくくなってしまいます。

そのようなお子さんに対する遊びで工夫する点は、動きの中で「身体を止める動き」を取り入れることです。
特にだるまさんがころんだの遊びは「動く」と「止まる」動きが合わさった遊びであり、2つの動作のメリハリをつけた遊びになります。

アレンジとして、「だるまさんが〇〇した」とこの〇〇のなかの言葉として「だるまさんがうさぎになった」と言えば、うさぎの姿勢のまま動かずに身体を止まる事ができるか、動物や色々な日常生活の動きを取り入れてみるのも面白いかもしれません。

「ものまねゲーム」で身体の動きを意識させる

多動なお子さんは「身体の感覚を感じる能力」が苦手であり、自分の手や足がどう動いているのかを感じる事が苦手であります。そのため、お子さん自身で身体の動きを感じてもらうことが大切です。
自分で動きを感じる事が苦手な場合でも、大人と一緒に身体を動かす経験を積むことで手や足がどのように動いているか理解する事もできます。
方法としては、大人が手本となり、ロボットや動物の動きを取り入れながらお子さんも同じように大人の動きを視覚的に真似することです。

この時も、「動く」ことと「止まる」動きを取り入れながら行うとお子さんが動いている感覚と止まっている感覚を感じやすくなります。

お手伝いで“動いていい場面”を経験する

どうしても落ち着きがなく動き回ってしまい、大人に注意をされる事も多いと思います。そのようなお子さんは場の状況に合わせた行動が難しい傾向があります。例えば、休み時間でグランドを走り回る事は怒られませんが、それが授業中になれば注意をされてしまうと思います。
このような場合、身体を持て余しているお子さんにはお手伝いや役割の中で身体を動かすと良いでしょう。
例えば、食事の準備をするために、食器類などを食卓に運んだり、掃除機をかけることは身体の関節をたくさん動かすため、動き足りないお子さんにとってそのニーズを補える事ができるからです。

紹介した以外のお手伝いでも、窓を拭いたりするなど手や足の関節をたくさん動かせるよう全身の動きを取り入れながらお手伝いをすると、動く必要がある状況では動くという認識が高くなります。お手伝いができたらしっかり褒めてあげる事も大切です。

落ち着きがない子への声かけの工夫

「静かにしなさい」よりも“見守り”が大切

どうしても落ち着きがないお子さんは、学校や公共の場では「静かにしなさい」「落ち着いて」などそのような言葉を大人に掛けられることが多いのではないでしょうか。
もし、お家でも親御さんに何度も注意をされたらお子さんは行き場がなくなると思います。私が思う事は、無理にお子さんに注意をし過ぎることはあまり良くないということです。

動くことには必ず理由があると理解しよう

多動になるお子さんの中には、身体を安定させる力が弱い理由もありますが、それ以外にも脳の活動を安定させるために動いている事もあります。

動いていることには必ず理由があります。

逆に無理矢理にお子さんの動きを止めてしまうと余計に動き回ってしまうかもしれません。せめてお家では、無暗にお子さんの動きを止めることは控え、暖かく見守ってあげましょう。

お家での関わりで意識したいポイント

落ち着きがない・多動なお子さんにとって、家庭での過ごし方や大人の関わり方はとても大切です。
「静かにしなさい」「じっとして」と繰り返し注意しても、なかなか落ち着かないことがありますよね。
それはお子さんの意思の問題ではなく、身体や脳が落ち着くために“動くこと”を必要としている場合もあります。

ここでは、お家で意識したい2つのサポートのポイントを紹介します。

動きを無理に止めず「目的を持った行動」へ導く

落ち着きがないお子さんに対して、「動かないように」と注意するだけでは逆効果になることがあります。
お子さんは「止まらなきゃいけない」と思うほど緊張してしまい、かえって体を動かしたくなってしまうこともあるからです。

そこで大切なのは、動きを止めるのではなく“目的のある行動”に置き換えることです。
たとえば、

  • 食卓を整える
  • 洗濯物を運ぶ
  • 掃除のお手伝いをする

など、家の中で身体を動かせる役割や手伝いを与えることで、動くエネルギーを建設的に使えるようになります。

このように「今は動いていい時間」「これはお手伝いとして動く時間」といった形で、場面に応じた行動の切り替えを学ぶことが、結果的に落ち着きにもつながっていきます。

家庭を“安心できる場所”にすることが最優先

学校や園などの集団生活では、「静かに」「座って」といったルールが多く、お子さんにとって緊張の連続になりがちです。
だからこそ、お家ではお子さんが安心して自分らしく過ごせる環境をつくることが何より大切です。

たとえば、

  • 「動きたいんだね」と受け止めてあげる
  • 落ち着かない様子があっても、少し距離をとって見守る
  • できたことを見つけて積極的にほめる

といった関わり方が、お子さんに「ここなら大丈夫」という安心感を与えます。

家庭が安心できる場所になることで、外で頑張っている分のストレスをリセットでき、結果的に落ち着きや集中にも良い影響が出やすくなります。

お子さんの「動き」には理由があります。
無理に止めようとせず、その背景を理解しながら寄り添うことで、少しずつ安心して落ち着ける時間が増えていくはずです。

まとめ|動くことも子どもの大切なサイン

お子さんにとって動く事は、脳の活動を維持するためでもあり、そのお子さんにとって必要だから動いているかもしれません。大人が注意をしても、お子さんは「何で怒られているの?」と感じているかもしれません。
実際に私の放課後デイサービスに通っているお子さんの中にはそのような子も多く見受けられています。「動いている」ことには必ず理由があります。それを常に念頭に置くことで、糸口が見えてくるかもしれません。

ただ、言えることは、お子さんを落ち着かせるために注意をし過ぎることもあまり良いとはいえません。外でも注意され、お家でも注意をされたらそのお子さんの安心する場所が無くなってしまうかもしれません。無理に落ち着かせる必要はなく、お家でも落ち着きがない時は、お手伝いなどの目的をもった行動を経験させてあげてみましょう。
目的をもって行動することで、「動いていい場面」と「静かにしないといけない場面」の区別を理解する練習にもなります。このお手伝いの声かけに対しても、お子さんがしたくない時に無理は不要です。暖かく眼の前のお子さんを見守りましょう。

作業療法士*てつ先生

経歴:作業療法士歴11年

作業療法士として働いています! 感覚統合や運動療法、作業活動などを通して、子供達が楽しく成長出来る事を目指して日々努力しています。

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