3歳で言葉が出ないのは発達の遅れ?相談の目安と家庭でのサポート法
言語聴覚士*はる
2025/12/03

3歳で言葉が出ない、あまり話さないと感じると、パパやママは心配になりますよね。
この時期の子どもは、まだ言葉で気持ちを十分に伝えられず、つたない表現で自分を表すことが多くあります。そのため、家庭での関わり方が、言葉の発達や会話の楽しさに少しずつ影響していきます。
今回は、3歳で言葉が出ない子どもに、家庭でできるやさしいサポート方法や工夫をご紹介します。
目次
- 3歳でまだ話さない…それって大丈夫?
- 3歳の子どもが言葉を話さない主な原因4つ
- 言葉が出ない子に家庭でできる6つのサポート法
- 相談を考えるタイミングと相談先の選び方
- まとめ|焦らず、わが子のペースで言葉を育てよう
3歳でまだ話さない…それって大丈夫?

3歳を過ぎると、子どもたちは言葉を使って自分の気持ちを伝えたり、簡単な会話を楽しめるようになります。 そんな中で「同じ年の子はもうたくさんおしゃべりしているのに、うちの子はまだ話さない…」と感じると、パパやママは心配になりますよね。
実は「3歳でまだ言葉が出ない」という悩みは、決して珍しいことではありません。発達には個人差があり、話すタイミングも子どもによって大きく異なります。
ただし、成長のペースによるものなのか、何かしらの要因が関係しているのかを見極めるためにも、まずは3歳ごろの言葉の発達の目安を知っておくことが大切です。
3歳ごろの言葉の発達の目安
3歳ごろになると、一般的には次のような言葉の発達がみられるようになります。
- 「ママ」「いく」「たべる」など、二語・三語文が話せる
- 名前を呼ばれて「はい」と返事ができる
- 自分の名前や年齢を伝えられる
- 「これはなに?」「どこ?」など質問が増える
- 簡単な会話のキャッチボールができる
もちろん、これらすべてができなければいけないわけではありません。
言葉を理解する力(=理解語彙)は話す力(=表出語彙)より先に育つため、「話さないけれど、言っていることは理解している」というお子さんも多くいます。
もし言葉の発達がゆっくりでも、目が合う・指差しをする・身振りで伝える・ごっこ遊びを楽しむ、などの様子がある場合は、コミュニケーションの基盤が育っている証拠です。焦らずに見守っていきましょう。
一方で、呼びかけに反応がない・表情の変化が乏しい・他者との関わりにあまり興味を示さない、などの様子がある場合は、早めに相談してみるのもおすすめです。
話さない子が増えている背景とは?
最近では、「3歳になっても話さない」「言葉の出が遅い」と感じる保護者の相談が増えています。
その背景には、いくつかの環境的な要因が関係していると考えられています。
- 会話の機会が減っている
- 外遊びや集団活動の減少
- 家庭での「先回り」が多い
共働き家庭の増加や、動画・デジタル機器の利用時間が長くなったことで、日常会話の量が減っている傾向があります。子どもは人とのやり取りの中で言葉を学ぶため、話しかけられる機会が少ないと発達がゆっくりになることもあります。
コロナ禍以降、外での交流や友達との関わりが少なくなり、コミュニケーション経験が減っているケースもあります。体を動かして遊ぶことは、脳の発達や言葉の発達にも関係しています。
子どもが言葉で伝えなくても、親が気持ちを読み取ってしまうことも多いものです。こうした「伝えなくても通じる」状況が続くと、子どもが言葉で伝える必要性を感じにくくなることもあります。
こうした環境要因は、決して親の責任ではありません。
大切なのは、「どうすれば子どもが安心して“伝えたい”と思える環境をつくれるか」ということ。
次のステップとして、家庭でできるサポートの工夫を意識していくと、少しずつ変化が見えてくることもあります。
3歳の子どもが言葉を話さない主な原因4つ

3歳の子どもの言葉が出ない要因は全部で4つあります。
- 聴覚の問題
- 発達の遅れ
- 口の機能の問題
- 個性
子どもは周囲で話している言葉を聞いたり、自分に話しかけられている言葉を理解したりすることで、言葉を話すようになります。
ただ、この要因のどこかにあてはまったり、それぞれの要因が組み合わさったりという理由で子どもの言葉が遅れることがあります。
①聴覚の問題によるケース

聞こえに問題があると、言葉の発達に影響を及ぼすことがあります。パパやママの声かけに反応しなかったり、日常の音への反応が薄かったりすると、耳に何らかの症状が出ている可能性があります。呼びかけても反応が薄い、TVの音を大きくしても聞こえない様子などがみられたら、聴覚の問題を疑い、近くの病院や地域の保健所にご相談してみてくださいね。
②発達の遅れによるケース

3歳児が話さない要因として、発達の遅れが疑われる場合もあります。言葉に特化して遅れがみられることもあれば、それ以外の症状も組み合わさることがあります。
- 目が合わない
- 相手の意図を理解できていない
- 集中力が低い
- 落ち着きがない
- 癇癪が多い
- 集団生活に支障がある
- 手が出てしまう
- こだわりが強い
上記の症状があれば「絶対に発達障害」というわけではありません。またこれがないから「絶対大丈夫」ということもありません。これ以外にも気になる症状が続いたり、これらの気になる症状が一定期間続くようであれば、まず専門知識のあるスタッフがいるところに相談に行ってみるとよいでしょう。
③口の機能の問題によるケース

言葉は話しているが聞き取りにくい、ろれつが回っていないなどの症状が気になるときは、口の機能の問題が関係しているかもしれません。
舌が短いや歯並びの問題で口が閉じられないなどの器質的な要因だけではなく、口や舌の使い方がうまくできない、息の吐く方法がわからないなどの要因で言葉が不明瞭になります。
そういった症状が続くときは「言語聴覚士」という言葉の専門のスタッフがいる療育や病院で発音の練習に取り組むことで改善する部分もあります。
④個性や性格によるケース

3歳の子どもの成長の速度は子によってさまざまです。おしゃべりが得意な子もいれば、あまりお話をしない子どももいます。
また子ども自身が言葉への興味関心が低かったり、人にコミュニケーションをとろうという意欲が低かったりというのも、話さない要因になります。
子どものペースを見ながら、必要な支援を通じて日々の成長を観察してみましょう。
言葉が出ない子に家庭でできる6つのサポート法

周りのお友達は上手にお話しているのに、わが子は話さないと不安に感じてしまうパパ・ママも多いと思います。
「話してほしい!」という気持ちが親として大きくなることは決して悪いことではありませんが、それを強く子どもに伝えようとすると子どもは苦しく感じてしまいます。
話さないわが子に対して、どのように関わればよいかというとポイントは大きく分けて6つあります。
個人差があることを理解して関わる

幼児期の子どもの発達は個人個人でスピードが違います。他にも保育園に通っていたり、兄弟が多かったりなど、周囲の環境や日頃どれくらい言葉を耳で聞いているかなどでも差がでるものです。
どうしても子どもの成長の基準を、周囲の子ども達と比べてしまうことは多いですが、本来の性格や個性を大切にしながら焦らずに、日常生活を楽しみながら、その子が分かりやすい言葉かけなどで関わる工夫をしていきましょう♪
子どもにプレッシャーを与えすぎない

大好きなパパやママが焦りや心配から、色々自分なりに努力しているのに理解できていない様子や話さない様子にイライラしてしまうと、子どもは怒りの感情を敏感に感じ、プレッシャーで話さなくなることもあります。
3歳児の多くはまだまだ言葉の発達途中で、不明瞭な言葉があったり、言い間違いがあったりします。
例えば「ちゃんとしゃべれたらおやつをあげるね」などの声かけは、子どもにプレッシャーを与えてしまうため逆効果になります。
おしゃべりに時間をたくさんかける

言葉を話すのに大切なことは子どもが言葉を理解していることです。
人間は言葉を頭でたくさん理解して、それがどんな意味をもつか、どういう場面で使うかを学んで話すことにつなげます。子どものペースに合わせ、場合によっては身振り手振りを使って、親が見本を見せるなどして、何を伝えたいかが明確になるようにお話に時間をかけてあげましょう。
会話に集中できるように、見ているテレビを一度止めたり、消したりしてしっかり向かい合わせで伝えてあげるなどの工夫も子どもが言葉を理解しやすい環境づくりといえます。
言葉以外のコミュニケーションにも視点を向けて大事にする

言葉以外で行うコミュニケーション「ノン・バーバルコミュニケーション」というコミュニケーション方法はご存じでしょうか?
表情や身振り手振り、声のトーンを変えるなど、伝えたい情報を会話以外で補って理解する方法です。なるべく短い単語で会話をしながら子どもが話しの内容を理解できているかどうか観察します。
子どもが言葉で返さなくても、動作や表情などでどのような会話に興味を持っているかなど違いがわかるかと思います。
コミュニケーションに対する興味関心を伸ばす

子どもが話さない要因として、コミュニケーションに対する興味関心が低いということもあげられます。
例えば、自分が話さなくてもパパやママは理解してくれている、自分以外の人という対象にあまり興味がないなどといった理由から子どもはコミュニケーションを必要としていない可能性があります。
- 子どもに選択する場面を与える
- 言いたいことをくみ取りすぎず、自分で伝えるという場面を作る
- 子どもがたくさん「楽しい」と感じる経験をして共有する
- 言葉や身振りで子どもが何かを伝えたときには応える
などといった関わりを継続することで、子どもは「人に何かを伝えたい」「この人ともっと遊びたい」など人への興味関心が伸びて、コミュニケーションを必要とする可能性もあります。
相談を考えるタイミングと相談先の選び方
「もう少し様子を見たほうがいいのかな?」
「他の子と比べてやっぱり気になるけど、どこに相談すればいいの?」
3歳前後の子どもの言葉の遅れに悩む保護者の多くが、こうした迷いを感じています。
発達には個人差がありますが、「何となく気になる」という親の直感はとても大切です。
ここでは、相談を検討する目安と、実際に相談できる主な窓口を紹介します。
気になる行動が続くときの相談目安
言葉が出ない理由は、成長のペースによるものから、聴覚・発達・口の機能など、さまざまな要因が考えられます。
そのため、「〇歳までに話せなければ異常」という明確な基準はありません。
ただし、次のような様子が 数か月以上続いている 場合は、一度専門機関に相談してみると安心です。
- 名前を呼んでも振り向かない、反応が薄い
- 指差しやジェスチャーがあまり見られない
- 言葉の理解があまり進んでいない(簡単な指示に反応しない)
- 表情の変化が乏しく、他人への関心が薄い
- 同じ行動を繰り返す、こだわりが強い
- 集団生活で落ち着かない・トラブルが増えている
これらの行動がすべて当てはまる必要はありません。
保護者が「ちょっと気になるな」と感じた時点で相談することが、早期発見・早期サポートにつながります。
相談した結果「問題ない」と言われるケースも多く、それもまた安心材料のひとつになります。
相談できる機関(保健センター・療育・病院など)
言葉の遅れや発達の心配がある場合、相談できる場所はいくつかあります。
それぞれの特徴を知っておくと、状況に合わせて動きやすくなります。
保健センター(市区町村の子育て相談窓口)
まず最初におすすめなのが、各自治体の保健センターや子育て世代包括支援センターです。
発達の相談員や保健師が在籍しており、発達チェックや専門機関への案内を受けることができます。
3歳児健診で指摘を受けた場合も、こちらが窓口になります。
療育センター・児童発達支援事業所
発達がゆっくりなお子さんを対象に、言葉・運動・社会性などの支援を行う施設です。
言語聴覚士(ST)や作業療法士(OT)など専門スタッフが在籍しており、個別支援やグループ活動を通して発達をサポートします。
利用には自治体を通じた手続きが必要ですが、保健センターで相談すればスムーズに案内してもらえます。
小児科・耳鼻咽喉科
身体的な要因(聴覚や口の機能など)が関係している可能性がある場合は、小児科や耳鼻科での受診も有効です。 例えば「呼びかけに反応がない」「音に敏感」「発音が不明瞭」などの様子があるときは、聴力検査や舌・口の機能の確認をしてもらうと安心です。
発達外来・小児神経科
総合病院や専門クリニックにある「発達外来」「小児神経科」では、発達検査や診断を行うことができます。
予約が取りづらいこともありますが、早期に予約を入れておくことで、必要な支援につながりやすくなります。
まとめ|焦らず、わが子のペースで言葉を育てよう

今回は、「3歳でもまだ大丈夫?言葉の出ない子どものサポート法」について紹介しました。周りと比べてわが子が話さない様子をみると、不安や心配が出てくるとは思います。しかしその子なりのペースで成長している様子を日々喜び、さまざまな関わりを継続していくことで、子どもは安心して過ごし、できることが増えていきます。紹介した内容が、悩むパパやママの参考になれば幸いです。

言語聴覚士*はる
経歴:言語聴覚士歴:10年目
2児の母をしながら、児童発達支援施設にて、楽しく遊びながら子供たちの「伝えたい!」という気持ちを育てることをモットーに






