【言語聴覚士が教える】学校への行き渋りに悩むあなたへ、子どもの発達に寄り添う対応とは?
言語聴覚士*はる
2025/09/17
はじめに

朝、なかなか布団から出てこない。
支度が進まない。
玄関まで行っても涙を浮かべて「行きたくない」と言うなど、そんなわが子の姿に、心を痛めている保護者の方も多いのではないでしょうか。
「うちの子、大丈夫かな?」
「発達に問題があるのでは?」
「どう接すればいいのかわからない…」
行けない本人も辛いですが、保護者の方もさまざまな悩みを抱えています。
今回は、子どもの発達に不安を感じている保護者の視点に立ち、学校への「行き渋り」にどう向き合い、どのようなサポートができるのかを具体的にお伝えします!
「学校の行き渋り」とは
学校の行き渋りとは、朝起きてすぐや準備の途中、玄関前などさまざまな場面で学校に行くことを嫌がる様子をいいます。
まずお伝えしたいのは、子どもの行き渋りは決して珍しいことではないということです。
小学校入学直後や学年の変わり目、友人関係のトラブルなど、子どもにとって環境の変化は大きなストレスになります。
特に発達に特徴のあるお子さんは、「変化への適応」が苦手なことが多いため、行き渋りを見せやすくなります。
行き渋りは「SOS」のサインのこともある

子どもが「行きたくない」と言うとき、それは何らかの困りごとや不安があるサインの可能性があります。
・授業がわからない
・教室が騒がしくてつらい
・先生や友だちとの関係に悩んでいる
・朝の支度に時間がかかってしまい、責められるのがつらい
こうした背景に目を向けず、「甘えている」「怠けている」と叱ってしまうと、子どもはさらに心を閉ざしてしまいます。
まずは子供の訴えを聞いて、共感・受け入れることをしてから自身の意見を一度伝えたり、どのように対応するか考えていきましょう。
子どもの発達特性に注目してみよう

「なぜうまく学校に行けないのか」がわからないと、保護者も不安になるものです。
そんなときは、子どもの発達特性に目を向けてみましょう。
ここからは発達の特性の行き渋りの関連性の例をお伝えします。
・感覚が敏感で、教室の音やにおいがつらい
・切り替えが苦手で、家から学校モードにうまく移れない
・マルチタスクが難しいため、朝の支度が混乱する
・強い不安傾向があり、新しいことに過度なストレスを感じやすい
これらは、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)などの発達特性としてよく見られます。
しかし
「診断名がつくかどうか」よりも大切なのは、 お子さんの「困りごと」に気づき、環境を調整してあげることです!
行き渋りへの具体的な対応方法

行き渋りの対応は、無理に登校させることではありません。
次のような対応が効果的です。
① 無理に登校を強いない
「なんで行けないの!」と責めると、子どもの不安は倍増します。
まずは安心できる環境づくりを優先しましょう。
少し時間をかけて本人の訴えを聞いて、その内容に応じて対応法を検討していくことがおすすめです。
② 話を聞くより、「気持ちをくみ取る」
子どもが自分の気持ちをうまく言語化できない場合も多いです。
その場合は、「今日は疲れてるのかな」「何かイヤなことがあったのかな」など、言葉にならない気持ちにも寄り添う姿勢が大切です。
③ 登校以外の選択肢を視野に
「保健室登校」「別室登校」「午後から登校」など、全ての時間登校することだけが正解ではありません。学校やスクールカウンセラーと相談し、柔軟な対応を検討しましょう。
④ 専門機関に相談する
市区町村の子ども家庭支援センターや発達支援センター、児童精神科などに相談することで、支援につながる場合があります。ひとりで抱え込まず、専門家の力を借りましょう。保護者自身もケアを

お子さんの行き渋りに付き添うことは、保護者にとっても大きなストレスになります。
そんなときは、自分自身の気持ちにも目を向けてください。
「親が笑っていること」が子どもにとって一番の安心材料になります。時には、保護者が心を休めることも大切です。
ママ友や家族、支援機関など、自分自身の相談先を確保しておきましょう。
「今すぐ」じゃなくていい。小さな一歩を大切に
行き渋りの解決に、「特効薬」はありません。しかし、子どもは少しずつ成長していきます。
周りの大人が支援を行い、安心できる環境を提供することで、宿題に手をつけたり、午前中だけ学校に行けたりとさまざまな一歩がみられるようになります。
そのような小さな一歩を、親子で喜び合いましょう。
最後に

子どもの「行き渋り」は、決して「甘え」ではありません。
それは、子どもなりに一生懸命発している「助けて」のサインです。
「行けない日があってもいい」 「うまくいかない日があっても大丈夫」
そんなふうにお子さんの気持ちに寄り添うことで、きっと親子で乗り越えていけるはずです。
しかし、寄り添うことは大人にも負担がかかることなので、一人で頑張ろうとせず周りの機関を頼りながら、ケアを大切にしていくことがおすすめです。

言語聴覚士*はる
経歴:言語聴覚士歴:10年目
2児の母をしながら、児童発達支援施設にて、楽しく遊びながら子供たちの「伝えたい!」という気持ちを育てることをモットーに