自己主張が強い子への対応はどうすべき?

公認心理師*けい先生

2024/08/23

言いたいことが言える元気なお子さんだと親は安心です。ですが、「〇〇したい!」「△△はイヤだ!」と毎日何度も大きな声で主張され、泣きわめかれるとうんざりしてしまいますよね。 お子さんの自己主張が強い原因は何なのでしょうか。また自己主張が強いお子さんには、どのように対応すればよいのでしょうか。長年、子育ての相談、発達の相談を受けてきた公認心理師が解説します。


1.自己主張が強い原因

①反抗期の自己主張

2~3歳のお子さんは自分でやりたがる反面、思うようにはできなくて泣いたり、甘えてきたり…性格的に主張が強いタイプのお子さんの相手をするのは大変です。 ただこんなに自己主張できるのは、ママパパとの安心した関係ができ、安全・安心な環境にいる証拠です。自己主張は自分を作り上げる大切な自我の発達、成長の過程です。親子のせめぎ合いがしばらく続きますが、自分でできることが増え、意欲や自信につながると、激しい自己主張は収まっていきます。
思春期の反抗期も同様に、親に全力でぶつかってくるため大変ですが、周囲から影響を受けて親の価値観から抜け出し、自立心が芽生えている証拠です。自分の意見や要求をしっかり伝えられる性格は将来、楽しみでもあります。


②育て方や環境の要因

泣きわめくとすぐに要求がかなうという環境で育つと、我慢する機会が少ないため、自己主張すれば思い通りになると学習してしまいます。また、「大人が昨日はダメと言ったのに、今日は言わない」「ママはダメだと言うのに、パパは許してくれる」というように、身近な大人に一貫した方針がない時、「もしかしたら許されるかもしれない」という気持ちから、自己主張は強くなります。 どんなに自己主張しても、いつでも誰でもダメなものはダメだという態度であれば、子どもは諦めるものです。


③ 感覚の過敏さ、こだわりの強さ、衝動性といった特性

「こうしたい!」と主張するお子さんの中には、感覚の過敏さが原因でこだわっているということがあります。「この洋服は絶対に着ない」「〇〇は絶対に食べない」といった主張の背景に、触覚や味覚の敏感さがあるかもしれません。一見、強い自己主張に思われますが、私たちが感じないような皮膚の感覚や、味覚の敏感さから不快を感じているということがあります。
またいつもと違う道、行ったことのない場所ではかんしゃくを起こす場合も、実は不安でたまらないということかもしれません。 刺激に反応しやすいお子さんは、刺激に引っ張られて衝動的に行動しがちです。大人の声かけや指示には従えなくなります。


2.自己主張への対応

①共感しながらルールを示す

「そうか、~したいのね」「これがイヤだったのね」と気持ちは汲み取りながら、「困ったね、でもダメなんだ」と ダメなことはやらせないようにします。大泣きするかもしれませんが、共感しながら見守ります。少し離れてそっとしておくのもよいでしょう。少し落ち着いたら、別のことに興味を向け、「がまんできたね」とほめてあげましょう。 ただ、感覚過敏のあるお子さんは別です。感覚はどうしようもないため、苦痛な感覚は避け、少しずつ慣らすようにしてあげましょう。


②ダメなものはダメ

一度「買いません」「食べません」と言ったら、どんなにお子さんが強い自己主張しても親が負けないようにします。この時、できれば強い口調で「ダメなものはダメ!」と叱るのではなく、お子さんに共感したり、「代わり〇〇しよう」と別のことに誘ったりし、気持ちが切り替わったら、その行動を認めてほめるようにします。ママパパにほめられれば子どもはうれしいので、またがんばろう、という気持ちにつながります。

*生理的な要求に対してはどうすべき?
ただ、どんなお子さんでも、お腹が空いている、眠い、疲れた、といった時にはなかなか気持ちは切り替えられません。かんしゃくを起こす前に生理的な要求はかなえてあげます。自己主張してかんしゃくを起こしたから要求がかなう、ということではなく、「眠いから」「お腹がすいたから」「疲れたから」「今日はがんばったから」という理由であれば、主張が通っても問題ありません。


③予告をし、見通しを示しておく

お子さんの感覚の過敏さ、こだわりのポイントを日々、よく観察しておきます。過敏さがあっても、予告しておけば心の準備ができて乗り切れることもあります。 こうしたらこうする、という見通しが分かれば、不安にならず、強い主張を避けられることがあります。

*具体的な声かけや行動例
「今日は公園に行かずにスーパーに行くよ」と出かける前に言っておく、初めての場所に行く時には「これからここに行くよ」と写真を見せる、といった工夫です。 やりたいと思ったら考えずに行動する、というお子さんには、「座ります」と短いことばで伝えて体を押さえておく、見た物に反応しやすく耳からの情報が入りにくいお子さんには視覚情報で示すといった対応が、強い自己主張になることを防ぎます。自分ではコントロールできないことも、周囲の工夫で「今は〇〇する時」ということが理解でき、状況に応じた自己コントロールの練習ができます。


おわりに

子どもの発達の視点から考えると、自己主張ができるということはとても大切です。日々の対応は大変ですが、お子さんの成長を心の中で喜びましょう。 自己主張が強すぎるお子さんには、感覚の過敏さからくるこだわりや、衝動性の抑えにくさといった、発達障害の特性が考えられることもあります。
家庭内での対応のパターンが決まってしまうと、変えることが難しくなるので、できるだけ早い内に専門家の力を借りることをお勧めします。

公認心理師*けい先生

経歴:公認心理師 27年目

心理士 27年 発達の偏り、不登校などの子育ての相談業務を担当してきました。2児の母です。

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