【言語聴覚士監修】奇声や声の大きさ調節が苦手な子向けのサポートは?
言語聴覚士*はる
2025/03/18
はじめに

子どもはとても可愛いですが、突如あげる大きな叫び声に耳をふさぎたくなることはありませんか?
声を出している様子は可愛らしくても、何度も大きな声を出されるのはやめてほしい!と思うことも少なくないはず。
今回は大きな声や奇声をあげてしまう子どもたちへの対策方法についてお伝えします。
なぜ子どもは奇声を発するの?

子どもが奇声を発する理由は言葉が出てこないことなどがあげられています。
例えば、嫌な気持ちだったり、開けてほしいなどの要求が言えなかったりすると子どもは大きな声をあげて訴えてきます。
特定の場面で奇声がある場合は、必ずなにか理由があります。その理由を考えてみるとよいでしょう。
それでは、子どもが奇声を発する理由をいくつかご紹介します。
1. 感覚の要因
感覚過敏(感覚が過剰に敏感なこと)や感覚鈍麻(感覚が鈍くなること)といった要素がある場合、子どもは自分の声の大きさを把握しづらくなります。
例えば、感覚過敏な場合、音が大きすぎて自分の声がどれくらい大きいかを感じにくくなることがあります。
一方、感覚鈍麻な場合、周囲の音が小さく感じるため、自分の声がどれくらいの大きさなのか分からなくなることがあります。
それによって今自分がどんな声を出しているのか分からないため、大きな声を出してしまうことにつながるのです。
2. 発達的な要因
子どもの発達の過程で、赤ちゃんの時期に特に多いのですが「声あそび」の段階というものがあります。大きな声を出すことが楽しくて思わず繰り返してしまうのです。
3. 自己認識の問題
自分の声や音の大きさを客観的に認識する能力が十分に発達していない場合、声の調節が難しくなることがあります。
また自分の声に注意をしっかり向けないと声の調整も難しいので、注意力の欠如なども要因としてあげられます。
聴覚の問題
聴覚に問題がある場合、自分の声の音量を調整することは難しいのです。例えば、耳が聞こえにくい場合、声を大きくしてしまいます。逆に、聴覚が過敏な場合、自分の声を過剰に意識してしまい、声を小さくしすぎるのです。
情緒的な問題やストレス
子どもが不安やストレスを感じている場合、感情が声の大きさに影響を与えることがあります。興奮して大声を出すことや、逆に緊張して声が小さくなることがあります。
このように、声を出すことですが、注意力や認識力、聴覚などさまざまな器官が要因となっています。
これらが複合的に関わっていることが多いため、声の調節がうまくできない子どもへの支援には、その子どもの特性を理解し、個別の対応をすることが重要です。
大きな声で叫んでしまう子への対策

奇声や声の大きさの調節が苦手な子どもへのサポート方法を5つ紹介しますね!
1. 視覚的なフィードバックを使う
声の大きさを調整するためには、視覚的なフィードバックが効果的です。例えば、音の強さを色で示すグラフや絵などを使って、子どもが自分の声の大きさを把握できるようにします。
「今このくらいの大きさだね。じゃあこれくらいにできるかな?」などと声をかけ、目で見て確認もできるので、子どもが調整しやすくなります。
2. 音量の「目標」を設定する
子どもに声の大きさの「目標」を設定する方法も有効です。例えば、「ありさんの声」や「やさしい声」など、具体的な目標を伝えることで、子どもはどのくらいの声で話すべきかを理解しやすくなります。
3. 段階的な練習
初めから大きな声を小さくするのは難しいので、段階的に練習をすることが大切です。例えば、上のほうで述べた絵やイラストなど視覚的に分かりやすい工夫を用いながら、最初は少しだけ声を小さくする練習をし、次にもっと小さく、最終的に普通の会話の声の大きさを目指します。
段階的な進行で、子どもは達成感を感じやすくなります。
また子どもだけにやらせるのではなく、大人も一緒に楽しんで行うことが大切です。
4. 模倣とモデル提供
両親や幼稚園・保育園・学校の先生がモデルとなり、適切な声の大きさで話すことが重要です。また、いいモデルに「注目」をすることで注意力も養われます。
ある程度できるようになってきたら「〇〇ちゃん、〇〇くんお手本してくれる?」などと声をかけてみるのも、子どものやる気をアップさせる秘訣です♪
5. 遊びを通じて学ばせる
ゲームや歌などを通じて、楽しく声の大きさを調整できる練習をします。たとえば、「ありさんの声で歌ってみよう」といって小さな声で歌い、活動を通じて、楽しみながら学べます。
どんな練習も、伝えるときも、子どもが楽しんで参加できなければ継続できないので、楽しめるように関わっていきましょう!
まとめ

今回は、大きな声を出してしまう子への対策方法についてお伝えしました。
私も自分の子どもの大きな声に耳をふさいでしまいたくなることはよくありましたが、少しずつ身も心も成長していくにつれて、こちらの意図を理解し調節できるようになってきました。
その子個人のペースに合わせて、サポートしてみてくださいね。

言語聴覚士*はる
経歴:言語聴覚士歴:10年目
2児の母をしながら、児童発達支援施設にて、楽しく遊びながら子供たちの「伝えたい!」という気持ちを育てることをモットーに