【心理士が教える】嘘をつく癖が治らない・どう対応する?
公認心理師*けい先生
2025/02/18
はじめに
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お子さんに嘘をつかれた時のショックは、親としては大きいものです。しかも嘘の回数が増え、他の人にも嘘をつくクセが治らないとなると、親としてはどう対応していいか悩むことでしょう。
子どもの嘘は強く叱ればなくなるというものではなく、むしろ逆効果になることもあります。今回はお子さんの嘘への対応を解説します。
嘘の理由を探ってみる
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まずはお子さんが嘘をつく背景を考えましょう。子どもの嘘には、自己防衛、不安、注意を引くためなど、さまざまなことが背景にあります。
理由はひとつではなく、複雑にからみあうこともあります。そのような場合はお子さん自身、自分でも理由が分からないかもしれません。
大切なのは、お子さんが嘘をつく理由を親が色々な角度から考え、複雑なお子さんの気持ちを少しずつでも理解するようにすることです。
お子さんが嘘をつく理由は以下のようなことが考えられます。
自分を守るため
子どもは罰を避けたいと思うとき、また何かに対して不安を感じているときに嘘をつくことがあります。例えば、宿題をしていないのに「宿題、終わった」と言ったり、友達を叩いたのに「叩いてない」と言い張ったりするのは、嘘をついて怒られるのを避けようとしているためです。
注意を引くため
子どもは大人や友達の注意を引くために嘘をついたり、話を大げさに話したりすることがあります。悪気はないのですが結果的に嘘をついたことになり、怒られたり、信頼を失ったりしてしまいます。自己肯定感が持てており、自信がついてくるとこのような嘘はつかなくなります。
想像したことを現実であるかのように感じるため
空想と現実の区別がつきにくく、自分の想像したことや希望が現実であるかのように話すお子さんがいます。このような場合、子ども自身は嘘をついている自覚はありません。ですが事実と異なるため、周囲からは嘘をついていると言われてしまいます。小さいお子さんにはよくありますが、小学生になってもマイワールドのあるお子さんの中には、発達の偏りのあるお子さんもいます。
自尊心を守るため
友達の前で「自分は〇〇ができる」「自分は△△をしたことがある」という風に、自分を良く見せたい、他人に認められたいという気持ちから、実際より大げさに語り、行き過ぎて嘘になってしまうことがあります。また学校でいじめに遭っているような場合に、いじめられている情けない自分を人に知られたくない、という理由から「学校は楽しい」と自分のプライドを守るための嘘をつくことがあります。
感情的にならず、落ち着いて話を聞く
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子どもの嘘に気づいた時、カーっと頭に血が上るかもしれませんが、そんな時は深呼吸です。お子さんの嘘の背景にある気持ちや理由を分かろうという姿勢が何より大切です。
「嘘はダメでしょ!!」と怒鳴られるのと、「何か訳があったんだよね」という風に、どんな気持ちで嘘をついたのかを尋ねられるのでは、お子さんの今後の態度が違ってきます。親が怒りで感情的になると、お子さんが安心して話をすることができなくなります。怒りや叱責は逆効果であり、お子さんがさらに嘘を重ねる原因になりかねないことを覚えておきましょう。
普段から安心して話ができる雰囲気を作る
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お子さんが安心して話ができる家庭の雰囲気作りは大切です。例えば「宿題はまだしていない」とお子さんが本当のことを言っても、頭ごなしに叱られることがなければ、安心して本当のことを話せます。
友達を叩いたと聞くと「ダメじゃない!」とすぐに叩いたあなたが悪い、というジャッジをしてしまいがちでが、一旦判断を保留にし、「あら、何があったの?」と受け入れるようにします。普段からお子さんの話に耳を傾け、その背景にある気持ちは受け止めていくのです。
例えば、相手の子に悪口を何度も言われ、我慢ができなくなって叩いたのであれば、気持ちは分かります。お子さんは、自分の感じていることや考えていることを「それは嫌だったね」と分かってもらえれば、自然と嘘をつかなくなります。
またお子さんが自分のよくない行動を話せたら「よく話してくれたね」と認めるようにし、正直に伝える行動は大切なことであるということを示していきましょう。
おわりに
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怒られることが嫌でつい嘘をつく、という経験が全くないという方はいないのではないでしょうか。自分が嘘をついた時、どんな風に対応してくれるとよかったかを思い出してみましょう。
自分の気持ちを表現しにくい、コミュニケーションがうまくいかない、学習についていけない、落ち着かない行動が多くて怒られることが多い、といった発達障害のあるお子さんは自己肯定感を持ちにくく、自信を持ちづらくなります。自分を守るための嘘や注意を引くような嘘をつくことが増えるかもしれません。
自分を信じる力=「自信」の持てているお子さんは、自分の非を素直に認められ、注意を引くような嘘をつくことがありません。お子さんの嘘の背景にある気持ちを理解し、認めるようにしていきましょう。
分かってもらえることで、自分を認め、自分を信じる力がついてくれば、嘘をついて自分を守る必要がなくなっていきます。
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公認心理師*けい先生
経歴:公認心理師 27年目
心理士 27年 発達の偏り、不登校などの子育ての相談業務を担当してきました。2児の母です。