忘れ物が多いのはなぜ?子どもの身支度・身辺自立のコツ
公認心理師*けい先生
2024/12/18
はじめに
園や学校に持っていくものを忘れてしまう、何度言っても身支度がスムーズにいかない… お子さんが忘れっぽいと、親は、「毎日のことなのにどうしてできないの?」とお子さんを叱ってしまうことが増えるかもしれませんね。 身辺自立をさせなければと焦る気持ちと出てくることでしょう。 お子さんが忘れっぽいのは、忘れないようにする努力や工夫が足りない、と考えるかもしれませんが、それだけではなく他にもさまざまな理由が考えられます。 お子さん自身も困っている可能性もあり、お子さんの特性に合わせた工夫が必要になります。
1.子どもが忘れっぽい理由
忘れっぽくなる理由によってサポートの仕方は変わります。そのため、理由を考えながら対応することは大切です。
聞き逃している
そもそも言われたことを聞き逃しているお子さんがいます。 普段の会話には問題がなく、ことばも理解できるため、指示も一見、聞いているように見えます。 ですが、耳から入る情報は把握しにくいこのようなタイプのお子さんは、忘れっぽく見えてしまいます。
注意散漫で他のことが気になる
しなければいけないことが把握できても、様々な刺激、例えばTVの音や、人の動きといった刺激に反応しやすいお子さんの場合、 そちらに注意が向いてしまうということがあります。
一つのことしか覚えられない
「〇〇をして、終わったら□□をしてください」と言われると、1つ目のことだけ、あるいは2つ目のことだけしか覚えていないということがあります。
片付けが苦手
持ち物の管理や整理整頓が苦手で、どこに何があるのか分からなくなってしまうため、 支度や準備をしなければいけないことが分かっていても取りかかれず、別のことを始めてしまうということがあります。
2.支度、準備など身辺自立の促し方
視覚的な情報を示す
耳から入る情報を聞き逃し、把握しづらいお子さんには、視覚的な情報が助けになります。
例えば、朝の支度のチェックリストや手順表を見えるところに貼っておくと、自分で何をすべきかを認識しやすくなります。
何度も言われなくても見れば分かるため、自分でできることが増え、達成感や自信につながっていきます。
将来的には、言われたことをすぐにメモする、TODOリストを作る、リマインダーアプリを使いこなす、といった力につながっていきます。
一緒にやって見本を見せる
就学前はあまり困らなくても、就学後は持ち物が増え、持っていく物、持ち帰る物、提出するもの、机に入れておく物など、
言われたことを記憶に留めておきながら、持ち物を分類し、管理をしなければいけなくなります。
忘れっぽいお子さんにとっては情報量が多く、急に一人でやるのは負担が大きくなる可能性があります。
就学前から、園に持っていく物は自分で準備、片づけをするようにし、準備の仕方を教えることが必要です。
やってみせたり、やらせてみたりしながら、少しずつ自分でできることを増やしてあげましょう。
就学後も、どうしたら忘れないのかをお子さんと一緒に考え、付箋を筆箱に貼る、連絡帳に書く、といったリマインダーの工夫をするようにしましょう。
忘れ物が多くなると、学校生活には支障を来すことが増えます。
お子さんに忘れっぽい傾向があるようなら、中学年、高学年になっても、親がさりげなくサポートしてあげるようにしましょう。
刺激を減らす
散らかっていると注意がそれやすくなり、必要なものが見つけられなくなります。
ふと目についたおもちゃやゲームで遊び始め、やるべきことに向かえないということもあるかもしれません。
また、家族の声やテレビの音などが大きいところでは、準備や支度といったやるべきことに注意が向きにくくなります。
園や学校は聴覚的にも視覚的にも刺激が多く、落ち着かないかもしれません。
例えば朝、早めに登園、登校ができるなら、なるべく落ち着いた時間にやるべきことができるようにする、下校の際、みんなが帰ってから持って帰る物をチェックする、などといった工夫ができるとよいでしょう。
整理整頓の仕方を教える
片付けるように促しても、何から手を付けてよいか分からず、片付け方が分からないお子さんもいます。
物の定位置を決め、使ったら定位置に戻すように教える、何をどこに入れるか書いたり写真を貼ったりして分かりやすくする、といった工夫をし、
片付けを一緒にして見本を見せるようにします。
コツは、あまり細かく分類せず、片付けやすい大きなかごや箱を用意することです。
また「園や学校から帰ってきたら、〇〇を出して、□□はここに置く」、というルールを決めると定着しやすくなります。
おわりに
忘れっぽかったり、毎日の準備や支度がスムーズにいかなかったりするお子さんの中には、注意欠陥・多動性障害(ADHD)のお子さんがいるかもしれません。
ADHDのお子さんには、多動だけでなく、やるべきことに注意を向けたり、集中したりすることが難しかったり、思いついたことをすぐに行動に移すような衝動性があったりします。
もしそうであれば、お子さんが頑張れないせいではなく、脳の機能の問題です。
他のお子さんがごく自然にすぐにできることが、どうしてもできないという時、お子さんは困っていたり、悔しい思いをしていたりするかもしれません。
何かが急にできるようになる、ということを期待し過ぎず、スモールステップで少しずつできることを増やしていきます。
親が一方的に教えるより、一緒に考えるとやってみよう、という気持ちになりやすく、将来、自分で対策を考える力にもつながります。
できないことを責めたり、叱ったりするのではなく、どうしたらできるのか、特性に合わせた方法を教えて見本を見せるようにし、たくさんほめるようにしましょう。
公認心理師*けい先生
経歴:公認心理師 27年目
心理士 27年 発達の偏り、不登校などの子育ての相談業務を担当してきました。2児の母です。