自傷や癇癪の対応って?どう止めたり抑えるの?
公認心理師*やまおさん
2024/09/02
子ども本人が思うような結果が得られない時に、「うまくいかなかった」「悔しい」「嫌だな」と言葉にできるのは望ましいことです。
一方で、うまく言葉にできないために、癇癪を起こして、物に当たったり暴れたりすることで感情を表出する子もいれば、自分の頭を壁にぶつけたり、自分の手をかんだりして自傷行動を行うことで感情表出をする子もいます。
ここで大人が動揺して、子どもの望むように動いてしまっては、子どもはいつまで経っても、自傷や癇癪という方法を手放さないでしょう。それらの方法を取っても、子どもの思うような結果にはつながらないという体験をしてもらうことが何よりも大切です。
ここでは上記の考え方で、癇癪や自傷が表れた際にどう対応していけば良いのかお伝えしていきます。
①まずは、自傷や癇癪をやめさせる。
「やめなさい」と伝えるだけではなかなかおさまらないことが多いので、「まずはこっちにおいで」とか「そこの椅子に座ろうか」など、大人がその時に子どもにどうしてほしいのかを具体的に伝えましょう。この際に、大人側が落ち着いて伝えることが大切です。
自他を傷つける行為などで、行動を至急辞めさせる必要がある場合に関しては、「あなたを守るために、このままの状態が続くのであれば、~秒後に体を止めます」と予告した上でフォールディング(体を抱え込む)しましょう。
相手が小さい子どもであれば、大人一人で十分ですが、相手の体が大きい場合などは複数人で対応しましょう。また、フォールディングする際には、毛布などを使うと有効です。
②やめたところでほめる
時間がかかってでも、大人の指示に従ったりして、行動をやめたら、その時点で「よくやめることができたね」と評価してあげましょう。
この時点で、自傷や癇癪に対して叱ってしまいがちですが、大人から「やめなさい」と言われてやめたのに叱られたとなると、その後は、なかなか言うことを聞いてくれなくなります。
また、行動をやめた後に叱られるということが学習されてしまうと、子どもも、「この後、叱られるのは嫌だな」という思いが生まれてしまって、
その行動をやめることに抵抗ができてしまいます。
③どう行動して欲しいのかを
具体的に伝える
大人が、その子のどのような行動を「自傷」や「癇癪」として不適切だと思っているかを教えた上で、同じような状況になった際に今後はどう行動してほしいのかを、具体的に伝えます。
必ず、肯定文で「~しましょう」と伝えます。「~してはだめ」という否定形で伝えてしまうと、新しい行動の獲得に結び付きにくいためです。
具体的というワードを多用しますが、抽象的な指示では、それを理解しにくい子どもがいるからです。
「ちゃんとしなさい」と言われても、何が「ちゃんとする」なのかが分かりにくいですし、大人でも定義が人それぞれ異なります。そのため、必ず具体的に伝える必要があります。
適切な方法は場面ごとに異なりますが、基本的には自分の気持ちや意見を言葉で伝える、ということが土台になるでしょう。
④お手本を見せて、やらせてみる
言葉で「~しましょう」と伝えても理解しにくい子どももいます。できれば、大人がまず見本を見せてあげることも有効です。 見本を見せた後に、すぐに子ども本人にやらせてみて、うまくできていたら評価してあげることで、行動として定着しやすくなります。
⑤適切な行動が出たときに評価、褒める
これは④にも通じますが、子どもが適切な方法をとった時に、すぐに評価してあげることが大切です。
「そんなのできて当たり前」で大人がスルーしてしまっては、行動として定着しません。
また、子どもは「大人が注目した行動」を繰り返しやすいことが分かっています。
自傷や癇癪に対して大人が叱る等して反応する一方で、適切な方法を取っている際に大人が無反応であれば、結果的に、子どもは自傷や癇癪を繰り返しやすくなってしまいます。
叱るという行為も、大人から子どもへの注目の一つだからです。
⑥自傷、癇癪をして、子ども本人は
どんな損があったかを振り返る
これは落ち着いてからで良いのですが、自傷や癇癪という方法を取ったことで、子ども本人にとって、どんな損があったかを一緒に考えてみましょう。 大人に叱られた、楽しい時間がなくなった、行きたい所に連れて行ってもらえなかった、自分のおもちゃが壊れてしまった等が出てくるでしょうか。 ここでも、大人は感情的になるのではなく、一緒に落ち着いて考えて、自傷や癇癪という方法を取っても良いことは無かったということを伝えてあげましょう。
おわりに
子どもが自傷や癇癪という方法をとると、大人の気持ちは大きく揺さぶられます。まずは大人側が深呼吸して、落ち着いた上で対応することを心がけていただければと思います。
公認心理師*やまおさん
経歴:臨床心理士、公認心理師
児童福祉の分野で心理士をしています(20年以上)。発達障害児への心理教育や、虐待被害を受けた児童への心理ケア等を担当しています。