子どもが歯磨きできないのは「わがまま」ではなく脳や感覚の特性かも??
作業療法士*こーすけ先生
2025/10/01
はじめに

毎日の習慣づけとして欠かせない歯磨きですが、多くの親御さんが苦労する場面のひとつです。
つい「ちゃんとやりなさい!」と叱ってしまうこともあるかもしれません。
ですが歯磨きの苦手さは「性格」や「しつけ」の問題だけではありません。
感覚の感じ方や集中のしやすさなどの、
脳の特性が深く関わっているのです。
感覚過敏で「歯磨きがつらい」

歯磨きは、大人にとっては当たり前の行為でも、子どもにとっては多くの感覚刺激が一度に押し寄せる体験です。
歯ブラシの毛先が歯や歯茎に触れる感覚、ミントの味や匂い、口の中に水分がたまる感覚。これらの感覚を「強すぎる」と感じてしまう子がいます。
これを感覚過敏と言います。
感覚過敏のある子にとって、歯磨きは強烈な不快感を伴うこともあります。
そのため
「嫌がる」
「逃げる」
「泣く」
といった行動が表れるのは、わがままではなく
「本当に耐えられない刺激から身を守ろうとしている」と行動と考えることができます。
多動で「集中が続かない」

もう一つの要因は多動や注意の持続のしにくさです。
歯磨きは「口を開けてじっとする」「同じ動作を繰り返す」ことが必要ですが、多動傾向のある子にとっては苦手な活動です。
途中で「動きたい!」「他のことが気になる!」という気持ちが勝ち、数秒で集中が切れてしまうことがあります。これは意志が弱いのではなく、脳の「注意を持続する力」が未発達なために起こります。
親ができる工夫

では、どうすれば子どもが少しずつ歯磨きに取り組めるようになるでしょうか。
感覚過敏と多動性、それぞれに合わせた工夫を考えましょう。
感覚過敏への工夫
- 歯ブラシを選ぶ
毛がやわらかいもの、ヘッドが小さいものを試す。 - 歯磨き粉を工夫
ミントが強いものではなく、子ども向けの甘め・低刺激タイプを選ぶ。 - 段階的に慣れる
最初は歯ブラシを口に入れるだけ、1本だけ磨くなど「小さな成功体験」を積む。 - 自分でコントロールできるようにする
子ども自身に歯ブラシを持たせて、親が手を添えて一緒に磨くと不快感が減ることもあります。
多動性への工夫
- 短時間で区切る
「1本だけ磨こう」「10秒だけ」と小さな目標から始める。 - 歌や映像を活用
「歯磨きの歌」や動画を流すと、集中が持ちやすくなります。 - 歌や映像を活用
「歯磨きの歌」や動画を流すと、集中が持ちやすくなります。 - タイマーを使う
「ピピッとなるまで頑張ろう」と目に見えるゴールを示す。 - 親子で一緒にやる
親が隣で磨くと、真似をしながら続けやすくなります。
「できない」ではなく「練習中」

歯磨きができない子を見ると、「他の子はできているのに」と焦ったり、つい叱ったりしてしまうかもしれません。
ですが、その子にとっては「感覚のつらさ」と「集中の難しさ」という壁がある可能性があります。
大事なのは「できない=悪い子」ではなく「できるように練習している途中」と捉えることです。 歯磨きは毎日の習慣だからこそ、親子で一緒に工夫を重ねることで少しずつ慣れていきましょう。
まとめ

歯磨きができない背景には、感覚過敏による「強すぎる刺激のつらさ」と、多動性による「集中のしにくさ」が隠れていることがあります。
叱るのではなく、環境を整え、工夫を積み重ねることで、子どもは「自分にもできるんだ」という自信を持ちやすくなります。

作業療法士*こーすけ先生
経歴:発達障害を抱える方を支援して10年。現在は訪問リハビリに従事しています。
子どもの「できた!」を増やすお手伝いをしています。