「おもちゃの貸し借りができない」時はどうしたら良い?解決のための3ステップを心理士から紹介!

公認心理師*やまおさん

2025/01/20

はじめに

子どもと一緒に公園に行くと、子どもは好奇心旺盛ですので、他の子が持っている玩具が気になります。
相手の子も、わが子も、お互いに気になっていて、交換して使おうとなれば、見ている側としてもホッとしますが、 相手の子が「貸して」と言い、わが子は「嫌だ」と言った時には、保護者の中に気まずい空気が流れます。
大人としては、この気まずい空気を打破したいと思ったり、あるいは、貸してと言われたら貸してあげるべきと思いこんでいて、 「貸してあげたら?」「貸してあげなさい」と言ってしまいがちです。でも、それって、正しいのでしょうか?

「それは誰のものか」という視点を忘れない

玩具などの物の貸し借り問題は、子どもが集団で遊んでいると必ず発生しますし、見守っている保護者としては、どう対応したものかと悩みがちです。
ここで、それは誰の物なのか、という視点が非常に大切だと思います。 それが個人の物なのか、共有の物なのかで、何が適切な対応なのかということが、大きく異なってくるからです。
「貸して」と言われても、その玩具が個人の物であれば、貸す貸さないはその子個人の自由です。 しかし、共有のものであれば、貸してほしいという思いと、貸したくないという思いは、折り合いをつける必要が出てきます。

「貸したくない」と思うことは悪くない

自分の玩具で遊んでいて、「貸して」と言われても「嫌だ」「僕のだから」と子どもが言えば、 保護者としては「貸してあげたら良いのに」と責めてしまったり、 「優しくない子に育ってしまったのかな」と不安に思うこともあるでしょう。

しかし、誰にも渡したくないと思えるほど、一つの遊びに集中したり、一つの玩具に愛着を持つことができるというのは、素晴らしいことです。 子どもが何かに熱中することは当たり前だと思われるかもしれません。ですが、私が現場で出会う子どもたちの中で、児童虐待を受けて育ってきた子どもの多くは、何かに熱中することができないのです。

安心して、何かに取り組むことができる環境が整わなければ、子どもは無我夢中で遊ぶことはできません。 そう考えると、子どもが「貸したくない」と言えることは、悪いことではないのです。 大切なことは、「貸したくない」という気持ちを我慢させるのではなく、 自分の「貸したくない」という気持ちを相手にどう伝えるかということでしょう。

貸し借りができるようになるには

一方で、共有の物に関しては、上手に貸し借りができるようになる必要があります。
そのためには、どのようなアプローチが有効でしょうか?

①大人がルールを設定する

共有の物に関しては、貸し借りについてのルールを明確にしておく必要があります。 貸し借りを始める前にルールを設定しているか否かが、トラブルが起こるかどうかを大きく左右します。 子ども同士で揉めてからでは遅いのです。共有物でトラブルになってしまうのであれば、共有物の数を減らす等の工夫も有効です。

②具体的に教えてあげる

貸し借りの方法として、「優しく言ってあげて」とか「相手の子のことも考えて」という言葉をかけても、子どもには分かりません。
他の子が使っている玩具を借りたいなと思った時にはどういう言葉で伝えるのか。
貸してほしいと言われた子どもが「貸してあげても良い」と思ったら何と言うのか、「貸したくないと思った」ときは何と言うのか、を明確に具体的に伝えてあげなければいけません。

多くの子どもは、小さい時に保護者との間で「貸して」「いいよ」という遊びをしているので、それが練習にもなっていると言えますが、 貸し借りでトラブルになってしまう子どもの場合は、そのトラブルになった場面において、大人が見本を見せて、子どもにやらせてみて、うまくできたら褒めてあげるというステップが必要です。
また、上記のルールに関しても、具体的な設定が必要です。たとえば、この玩具は30分経ったら交替する(あるいは一度返却する)、 貸してと言われたら10分後に貸してあげるなどの設定があると、うまくやりとりができる子が増えます。

③うまくできた時に、たくさん褒めてあげる

貸し借りで揉めたときではなく、うまくやりとりができた場面を見逃さずに「今の言い方、優しくて、すごく良かったよ」と評価してあげることが非常に大切です。

さいごに

多くの大人から見れば、貸してと言われれば自分が使っている玩具をすぐに貸してあげる子どもが「良い子」というイメージなのかもしれません。 しかし、子育て支援に携わる者としてそういった場面を見たとき、「もっと自分の気持ちを持ってほしい」 「嫌な時は嫌って言えるようになってほしい」「大人の顔色、気にしすぎなくてもいいよ」と思っています。
そう考えると、他の子から「それ、貸して」と言われた子どもに対して、「貸してあげなさい」だけではなく 「自分が使いたいなら、断ってもいいんだよ」という声かけも大切にしてもらいたいと思います。

公認心理師*やまおさん

経歴:臨床心理士、公認心理師

児童福祉の分野で心理士をしています(20年以上)。発達障害児への心理教育や、虐待被害を受けた児童への心理ケア等を担当しています。

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