寒いのに長袖を着ないのはなぜ?理由や対応を心理士が解説!

公認心理師*やまおさん

2024/01/03

はじめに

おそらくほとんどの学校には、どれだけ寒くても、とても薄着の子がいます。 私が子どもの頃にもいましたし、私が親になって子どもの学校に参観に行っても、そのような子がいました。 子どもながらに寒くないのかと思ったりしていましたが、好きでやってるんだから別にいいかと思ったりもしていました。
もしかしたら、今でも多くの人は、「あの子は好きで半袖を着ているんだから」と思われているかもしれませんが、 中には、色々な要因があって長袖を着れない子もいるのだということを知ってもらえたらと思います。 そして、そういう子ども達にどうサポートをしていけば良いのかについて考えていきたいと思います。

何らかの感覚が敏感な子たち

私が心理士として関わっている子どもの中にも、どうしても長袖を着たくないという子がいます。 その子どもたちの多くは、いわゆる発達障害の診断を受けていたり、「グレーゾーン」と言われるような発達障害の診断がつくほどではないが、 何らかの特性の偏り等があって生活のしづらさを抱えている子どもたちです。
肌の感覚が敏感になっている子どもにとっては、自分の肌に触れるものは極力少なくしたいという思いがあります。 本当は裸でも良いぐらいだけれど、それは良くないと分かっているので、最低限度の半袖半ズボンで過ごすことが多くなります。

生地によっては着れることもある

長袖は全くダメ、絶対に嫌という子もいれば、素材によっては大丈夫ということもけっこうあります。 私が心理士として関わっていた子どもの一人は、ずっと半袖だったのに、フリース生地を触った途端に気にいって、 お気に入りのフリースの上着をずっと着ていました。
こういう感覚の過敏性などは個人差が大きいので、誰もがフリースを気に入るわけではないのですが、その子にあった生地があるかもしれないということは頭に入れておく必要があります。
肌触りの異なるような生地をいくつか試すことはもちろんですが、周囲から見れば「同じ」と思う素材でも、子どもによっては「違う」ということもあります。 素材は同じように見えても、特定のメーカーのものなら着ることができるということもあります。

サイズを工夫してみる

生地が肌に触れるのを嫌がる子であっても、密着しないのであれば我慢できるということもありますので、 大人から見ればオーバーサイズのような上着を羽織ることならできるということもあります。

感覚も成長、変化する

肌の感覚は子どもが成長するにしたがって、過敏になることもあれば、過敏さがおさまることもあります。 子どもがよほど嫌がらないのであれば、毎年少しずつ試してみるのも良いと思います。

寒くないわけではないという理解が必要

この子たちは寒さを感じなのではなく、寒さに震えるよりも肌に生地が当たることが嫌なので、長袖を着ていません。 半袖を着て、「寒いよ」とストーブに当たったり、こたつに入ったりしていますので、「じゃあ、長袖着なさいよ」と言われてしまうのですが、 そういう難しさを持っているということを周囲の大人が理解してあげることが大切です。

中には、注目を引きたい子もいる

肌の感覚的には問題は無いけれど、長袖を着ない子もいます。 真冬に半袖で過ごしていれば、「寒くない?」「大丈夫?」と声をかけてもらえますし、注目を集めることもできるからです。 もしかしたら、そうすることでしか周囲の注目を集めることができないと思っているのかもしれません。
そういう側面がありそうな場合には、半袖であるというところ以外で注目して褒めてあげたり、 長袖を着たら「よく似合うね!」と言ってみたりして、冬に半袖を着なくても注目してもらえるという体験を積み重ねる必要があります。

さいごに

寒くて長袖を着たいけれども敏感さがあって着れない子、注目を集めたくて半袖を着ている子、 いずれにせよ、周囲が過剰に「寒いのに半袖」に反応することは良くないと言えるでしょう。 もちろん、からかったり、馬鹿にしたりすることは言語道断です。
そう考えると、長袖を着れない本人だけではなく、周囲へのアプローチも必要です。 子どもたちには「半袖を着たい人は半袖を着れば良いし、長袖を着たい人は長袖を着れば良い。 でも、自分と違う格好をしているからと言って、馬鹿にしたり、いじめるのは間違っている」ということをきちんと伝える必要があります。
敏感さ故に長袖を着れない子の場合には、本人や保護者と相談して、その理由を周囲に説明しても良いかもしれません。 長袖を着れない子でも、安心して生活できる環境を整えることがまずは大切だと言えるでしょう。

公認心理師*やまおさん

経歴:臨床心理士、公認心理師

児童福祉の分野で心理士をしています(20年以上)。発達障害児への心理教育や、虐待被害を受けた児童への心理ケア等を担当しています。

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