壁や家具によくぶつかる子へ!理由と解消法は?
ライター:作業療法士*てつ先生
2024.08.19
視力は正常なのに、よく壁や家具にぶつかったり、学校から帰宅するとよく腕や足にあざをつけてくるお子さんが最近多い印象を受けます。
そのようなお子さんは視力の問題ではなく、「眼球運動と身体運動のコンビネーション、連携が上手くいっていない」ことが原因の場合が多いです。
この問題は特に「身体の識別力」が鍵となります。身体の識別力とはいわゆる「お子さん自身で目を閉じていても、手や足がどのように動いているのかを理解できている」ということを意味します。
眼球運動と身体運動のコンビネーションとは?
私達が飲み物を飲む時には必ずコップを使います。
そして、そのコップに手を伸ばして取ろうとしますよね。
その時は、コップを正確に手で取る為には目でコップの位置を把握しないとそのコップを取る事はできません。
この状況を簡単に説明すると「目で見て、手を伸ばす」
これが、「眼球運動と身体運動のコンビネーションが働いている」ことになります。
このコンビネーション機能が正常に働いていることで、私達人間は目で物の位置を脳で読み取り、次に手や足を動かして物を掴んだり、狭い隙間をぶつからないよう通ることができるのです。
発達特性がある子に見られるコンビネーションの問題とは?
発達特性がある子の眼球運動と身体運動のコンビネーションで特に問題になるのは「予測する」ことです。
私達はもし狭い隙間があれば、目で見て「ここは通れそう」や「狭くて通れないな」とある程度予測して判断することができます。
これは眼球運動と身体運動のコンビネーションの連携が上手に作用しているため、予測して判断することができるのです。
しかし発達特性がある子は、この「予測する」ことが苦手なことが多いです。目で物事を判断することが苦手であるため、よく何かをしないといけない時や自分の身体が隙間よりも大きいのか、小さいかなどの状況を判断する時は、混乱してしまうことが多いです。
予測することが苦手になる根本的な原因が、身体感覚の識別力の苦手さによる「身体運動」の問題です。
子ども自身が身体の手足がどんな動きをするのか?どんな風に動いているのか?を理解することが苦手なため、予測することに加え、目の前にある隙間が自分の身体よりも大きいのか、小さいのかを判断することが苦手になってしまいます。
壁や家具にぶつかることが多いということは、自分の周囲にある物や人の距離間や奥行を把握することも苦手であることを意味します。
壁や家具にぶつかることが多い子にできるアプローチは?
これを解決するためには、身体感覚の識別力を向上させることが大切です。 身体感覚の識別力を向上させるアプローチをご紹介していきます。
①目隠しゲーム
子どもに様々な形のブロックや積み木を手で触りながらどんな形をしているのかを言い当ててもらうゲームです。 その際、両手の上には大きめの布やハンカチを覆いかぶせ、子どもには手の中を見せないように隠しながら言い当ててもらいます。
②トランポリンやバランスボールで身体を動かす
トランポリンは特に身体の筋肉に力を入れ、たくさん関節を動かすため、身体感覚を取り入れやすい遊びでもあります。 バランスボールは倒れないためにバランスを保たないといけないため、自然と身体の感覚を強化できる遊びでもあります。
おわりに
発達特性がある子は見ないとポケットの中にある物の形の区別がつかないことや、自分の身体を見ないと手や足がどのように動いているのか分からない子が多いです。 身体感覚を向上させることで、自然と眼球運動の向上にもつながり、物との距離間や奥行きの理解に繋げることもできます。
てつ先生
経歴:作業療法士 11年目
作業療法士として働いています!
感覚統合や運動療法、作業活動などを通して、子供達が楽しく成長出来る事を目指して日々努力しています。