なかなか指示が通らない!~発達障害児に伝わるコツ~
ライター:公認心理師*やまおさん
2024.04.22
私は普段から発達が気になると言われるお子さまや、その保護者の方と話す機会が多くあります。普段から色々な子どもたちと話していると感じるのですが、大人の伝えたいことがうまく伝わっていないということは、大人が思っている以上に頻繁に起きているようです。
大人は伝えたと思っていて、子どもはよく分かっていない、となれば子どもたちがうまく行動できないのも無理はないなと感じることがよくあります。そして、そんな些細なすれ違いが積もり積もってしまって、親子ともにしんどくなってしまいます。そうならないために、ここでは、子ども達に伝わる指示のコツについて触れてみたいと思います。
近づく・合わせる・穏やかに
一つ目は、近づいて、視線を合わせて、穏やかに伝えるということです。まずは、私はあなたに伝えているんだよということを分かってもらわないと始まりません。自分に言われているんだなと分かってくれないと、どんな指示をしても伝わることはありませんよね。また、大きな声では刺激が強すぎて、内容が入らないということもよくあります。
伝える時は肯定文をつかう
次に肯定文で伝えるということです。大人が子どもに指示を出す際に、「~してはいけない」という形で、否定文で話してしまうことがあります。しかし、これでは、大人の伝えたいことは半分しか伝わっていません。子どもの立場からしたら、「~はしてはいけないということは分かりました」「じゃあ、どうすれば良いの?」「正解は何なの?」ということになります。
発達特性がある子どもたちの中には、周りを見て行動したり、その場で何が適切なのかを判断するのが苦手な子どもたちがいます。そのため、「~したらダメ」と言われても、何をしたら良いのかが分からないままになっていて動けないということになりがちです。これは、子どもからしたら、何も指示してもらっていないと同じ状態です。
具体的に伝える
3つ目に具体的に伝えるということです。「私はあなたにこうしてほしい」「この場面ではこう行動してほしい」ということを具体的に伝える必要があります。具体的と明確にするのは、抽象的な言葉では理解にばらつきが生まれるからです。
例えば、「大切にする」という言葉で考えてみましょう。親が子どもに服を買ってあげたとします。親としては「大切にして欲しい」と思うのは自然なことです。しかし、ある人にとっては「服を毎日のように何度も着る」ということが「大切にする」という理解になりますし、別の人にとっては「お出かけ等の大事な時にだけ着る」ということが「大切にする」という意味になります。この辺りを理解せずに、親が子どもに一方的に「大切にしなさい」と叱っても、子どもは具体的にどうすれば良いのかわからないということになってしまいます。
これは、トラブル後の振り返りでも大切なことです。もしまた、同じような場面になった時に、大人としては、「あなたにこう行動してほしい」「こう行動することが正解です」ということを具体的に伝えてあげないと、また同じ失敗を繰り返してしまいます。
気持ちを言語化する
他者の感情や思考を言語化して伝えるということです。発達障害の子どもたちの中には、相手の気持ちや思考を読み取るのが苦手な子がいますので、「相手の気持ちを考えなさい」だけでは理解できないことがあるので、「私はこう思ったのよ」とか「相手の子はこう感じたんだよ」ということを明確に伝えてあげることが有効です。
子どもに確認をすること
子どもの理解を確認するということです。子どもに指示を出した後に「今、どんな話だった?」とか「私はあなたにどうして欲しいと言ってる?」ということを確認してみるのが効果的です。確認することで保護者自身も子どもがどこまで理解しているかを知る事ができ、伝わってるだろう。分かってるだろうという誤認がなくなります。
このような対応は、どんな子どもに対しても有効なポイントと言えます。ただ、発達特性がある子どもたちは、その特性ゆえに、大人の指示を理解しにくいことが多いかもしれません。そこで、大人側が「なぜこの子は言うことを聞かないのか?」「なんで分からないの!」と考えるのではなく、「自分の指示の出し方が良くなかったかも?」「どう伝えたら分かりやすいかな」と考えてみましょう。
大人側が工夫することで、大人の指示を聞いて動いたら大人に褒められたという経験の積み重ねが子どもの自信を生みますし、大人と子どもとの友好な関係性を作っていきます。指示を出す際のほんの小さな工夫ではありますが、その積み重ねが大きな違いを生みだしていくのです。
やまおさん
経歴:公認心理師 20年
児童福祉の分野で心理士をしています。発達障害児への心理教育や、虐待被害を受けた児童への心理ケア等を担当しています。