落ち着いて座れない子ども~お家で出来る療育トレーニング~

ライター:作業療法士*てつ先生

2024.04.12

発達障がいのお子さんの特徴として、落ち着いて座れない事が挙げられます。このようなお子さんの中には、身体の弱さが目立つ子が多いと感じます。

周囲の雑音や物に気を取られ、授業中にもかかわらず席を離れるなどのパターンもありますが、今回は落ち着いて座れない子供の身体に焦点を当てて解説し、お家でもできるトレーニングをご紹介していきたいと思います。

姿勢を保持する筋肉が弱い 

落ち着いて座れない子供の特徴として、猫背の姿勢になっているお子さんが多く見受けられています。これは、姿勢を保持する能力が苦手であると考えられます。

長時間座り続けるという事は、身体全体の筋肉に力を入れ続けることであり、専門用語では「姿勢保持能力」といいます。体幹の筋力が弱いお子さんは、姿勢を長時間保持する能力が低い事が根本的な原因として考えられます。座り続けるという事は、姿勢を保持するために常に体幹の筋力が働いている必要があります。

さらに、落ち着きがなく、座り続ける事が難しいお子さんの身体は「早い動きに慣れてしまっている」ことも原因にあると考えられます。速い動きとは、走ることやジャンプする動作の事を意味することであり、全身の筋肉を素早く収縮させる事になります。反対に座り続ける事は、姿勢を維持させる事を意味し、ゆっくりとした持続的な筋肉の働きになります。

このように姿勢保持能力の苦手さがあるために、椅子に座っている時に身体を何度もクネクネさせる事や、早い動きに慣れてしまっているため、同じ姿勢をとり続けるゆっくりとした持続的な身体の動きが苦手になっていると考えられます。これらの要因が重なり、落ち着いて座る事が難しくなっていると考えられます。

落ち着いて座れない子のお家で出来るトレーニング

落ち着いて座れない子供の特徴として同じ姿勢をとり続ける事が苦手であるため、身体全体を使った遊びが効果的です。トレーニングをする時に意識していただきたい事は、「子供が楽しくできる」事です。

子供が楽しく「何度もやりたい!」と思えるトレーニングの方が、継続性を維持出来るうえ、トレーニング効果も上がるからです。大人でも嫌な事よりも、没頭できる好きな事の方が上達は早いのではないでしょうか。これは子供にも当てはまるからです。私が経験した中で、特に効果があるトレーニング方法をご紹介していきたいと思います。

バランスボール遊び

最初は子供に任せ、好きにバランスボール(子供用)で遊ばせる事も良いと思います。お子さんの中には、バランスボールの上で座って跳ねる事が好きな子が多く、バランスボールを好きになるきっかけになってくれるかもしれません。

バランスボールに座りながらボールキャッチやキャッチボールなども効果的です。上手に何回ボールをキャッチする事が出来るか、クリアする毎にスタンプを集め、目標とするスタンプの数をゲットできた時はご褒美をあげるなど、意欲的に子供が参加できるよう工夫する事も大切です。

また、バランスボールにのったまま、ボールを蹴る事も効果的です。このように、バランスボールに座ってバランスをとりながら、手や足を動かす事は座り続けるために必要な「姿勢保持能力」を養えることに繋がります。

必要なものは0!手押し相撲

手押し相撲は道具が必要なく、手軽に出来るトレーニングでもあります。やり方は、肩幅に足を広げて立ち、手のひらで押し合う遊びです。 どちらが先に相手のバランスを崩せるか勝負します。身体を安定させるために同じ姿勢をとり続けるというバランス練習にもなります。また、ルールが簡単な為、未就学児さんでも取り入れやすい遊びです。家族や友達と手押し相撲大会をするのも面白いかもしれません。

四つ這い移動の動きを取り入れた遊び

こ四つ這いや動物歩きの動きは、体幹を強くするうえで効果的な運動です。四つ這いの移動とは、両腕を伸ばし、両膝を交互に動かしながら移動します。

この姿勢は、腕や足だけではなく、「肩甲骨」も多く動かしています。しっかり腕を伸ばして移動できるお子さんは身体が強いと感じます。しかし、発達障がいのお子さんの中には肘が伸び切らずに曲がり、身体を安定する事が難しいうえ、肩甲骨を上手く使う事が苦手な子が多いです。

これは体幹が弱いことが考えられます。甲骨は体幹と連動しているため、四つ這い姿勢は体幹の強さをみる指標にもなります。

お家では、テーブルなどの家具の下を四つ這いで移動する事や、レース感覚でご家族と一緒に四つ這いで競い合う事も効果的です。

終わりに…

今回ご紹介したトレーニングをするうえで、意識していただきたいことはお子さんが楽しくできることです。お子さんの気がのらない時は、無理にトレーニングする必要もないと思います。ゆっくり継続出来ることが大切です。 ご家族と楽しくトレーニングを行う機会があれば、子供にとっての楽しい思い出となり、その子が大人になっても家族と過ごした日々を忘れる事はないのではないでしょうか。

てつ先生

経歴:作業療法士 11年目

作業療法士として働いています! 感覚統合や運動療法、作業活動などを通して、子供達が楽しく成長出来る事を目指して日々努力しています。


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