突然起こる不登校・行き渋り~親が取るべき対応~

ライター:公認心理師*けい先生

2024.04.10

子どもが「学校に行かない」と言い出すと、親は青天の霹靂のように感じます。強い口調で「行きなさい!」と言ったり、引きずってでも行かせなければという気持ちになったりすることもあるでしょう。 親にとっては突然の出来事でも、子どもにとっては限界までがんばった結果、どうしても無理な状況なのかもしれません。もしそうであれば、親の強固な態度は子どもの心を深く傷つけることになります。 どうすればいいのかは子どもの年齢や性格、発達の特性、置かれている環境などによって異なるため、それぞれに合わせた対応を考えていくことになります。

「学校に行きたくない」と言い始めたら…

子どもが「学校に行かない」と言い出した時、もし、いじめがなく、学校では元気に過ごしていることが確認できたら、親と一緒に登校したり、保健室や相談室で過ごしたりすることを考えます。 朝、登校を渋る子どもを励ますのは大変ですが、決して大きな声はださず「行きたくない」→「そうか、行きたくないのね」、「休みたい」→「そうか、休みたいのね」と気持ちを受け止めます。行くか行かないかは保留にし、朝ごはんを一緒に食べ、身支度を手伝いましょう。強要はしませんが、遅刻してでも、または放課後でも、学校に足を向けることを誘ってみると良いと思います。特に低学年であれば、親と一緒に登校することが助けになります。 登校してもしなくても、夜は学校や勉強の話はせず、安心して過ごせるようにします。このような対応を根気強く続けていると、少しずつまた普通に登校するようになることがあります。

登校する日が減り、本格的に不登校が始まるということも多くあります。親は見通しが分からず不安は高まりますが、子どもの方が何倍も不安な状態です。気持ちが不安定になり、部屋に閉じこもったり、親に当たったりすることもあります。親子ともに辛い時期ですが、大切なのは安心して家にいられるようにすることです。不登校は子どもが限界までがんばってきた上で、やっと「もう無理」と言えたのかもしれないという視点をもつことが大切です。このような子どもにとっては「がんばれ」という励ましは苦しいものです。

不登校の原因は分からないことが多く、子ども自身も分からないかもしれません。様々なことが重なっていることもあります。身体疾患からくる体の不調、うつや統合失調症などの精神疾患、発達障害などの二次障害ということもあります。対応について、スクールカウンセラーや地域の教育センターなどに相談することをお勧めします。話をすることで、子どもに起こっていることを客観的にとらえることもできます。

もしも、いじめや勉強の問題、友達関係がこじれている等といった理由があれば、学校と協力して対応を考えましょう。すぐに解決するのは難しいかもしれませんが、この経験はとても大切です。 原因が分からない時、誰が悪いのか、と悪者を探したくなりますが、母親が自分を責めるようになると、子どもにとって家庭がいたたまれない場になり、心のエネルギーを益々奪っていくことになります。一人で悩まず誰かにSOSを出しましょう。

不登校からの回復の道筋

原因が分からなくても不登校からの回復の道筋は必ずあります。 家庭で安心して過ごせると、学校の話題でない限り、家族とは普通に話をするようになります。勉強はせず、ゲームや動画ばかりで昼夜逆転の生活が長く続くことが多く、親としては焦りますが子どもは心の中での適応を、時間をかけて模索します。昼間、同世代が学校で過ごしている時間帯はいたたまれず、忘れさせてくれるゲームや動画が必要であることを覚えていてあげましょう。罪悪感や劣等感を抱え、家にいても心は休めていないものです。 時間と共に、表情が良くなり、外食や買い物など、人目を避けながらも外出できるようになります。このような時期を経て、勉強や学校の話をするようになり、先生の家庭訪問も受け入れられるようになります。

学校ではなく、家庭教師や塾、教育委員会の適応指導教室、フリースクールといった別の選択肢に興味を持つことがあります。自分で選び、それができるようになると、自分は自分のペースでいいという感覚がはっきりしてきます。自分を信じる力がつくと、自分のペースでできることからやっていこう、という心持ちで登校を始めます。

不登校を乗り切るコツ

➊家庭が安心な場所であること:平穏な日常が、生きていく上での安心感のようなものを子どもに与えます。

➋子どものペースを大切にする:子どもの心の健康を守ることを最優先にします。

➌親が元気で過ごす:親がリフレッシュしながら適度に子どもとの距離を持っている方が、結果的には子どものためです。

➍学校とのかかわりは絶たない:学校に気持ちが向き始めた時、先生や友達のサポートが必要になります。

➎選択肢を探す:子どもはまだ狭い世界に生きています。色々な選択肢があることもタイミングを見て知らせ、一歩を踏み出すきっかけを作るようにします。

❻子どもの選択を尊重する:親から見るとリスクの高い選択を希望するかもしれませんが、まずは否定せず話を聞きましょう。頭から否定しなければ、一緒に考える姿勢が持てます。

おわりに

我が子の不登校のショックは大きいものですが、親がなるべく早く落ち着き、見方を変えるようにします。不登校という選択は自分で自分を守ることができるという健康さの表れでもあります。今が安心できるということが回復の基盤になります。自分は自分のペースでいこう、と自分を信じられる力がついていくことが回復の過程です。 子どもの不登校は親に様々なことをつきつけます。ですが、これまでも一生懸命子育てをしてきたのですから、自分を責めることはありません。子育てを振り返りながら、子どもに合ったやり方を考えていきましょう。

けい先生

経歴:心理士 27年目

心理士 27年 発達の偏り、不登校などの子育ての相談業務を担当してきました。2児の母です。


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